民法を学ぼう「権利能力なき社団」

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司法・法務

本稿では、「一般社団法人及び一般財団法人に関する法律」を「一般法人法」と称する。

権利能力なき社団とは

権利能力なき社団とは、社団の実体を有するが、法人格を与えられていない団体をいう。
例えば、町内会、自治会、大規模な同窓会などがこれに当たる。

社団と組合

団体に関する制度として、「社団法人」(一般法人法)と「組合」(民法667条以下)が設けられている。

通説では、「社団法人」は、法人格を与えるにふさわしい団体(社団)であり、「組合」は、法人格を与えるにふさわしくない団体である、とされる。

しかし、法人格を与えるにふさわしい団体でありながら、法人格を得ていない団体、すなわち、権利能力なき社団が存在している。そして、権利能力なき社団が、法人格を取得していないからと言って、「組合」の規定を適用するのは妥当でなく、「社団」としての実質に沿った取り扱いとするため、法人規定を適用しようとするのが、問題の所在である。

権利能力なき社団の要件

  • 団体としての組織を備えていること
  • 多数決の原則が行われていること
  • 構成員の変更にもかかわらず団体そのものが存続していること
  • その組織において代表の方法、総会の運営、財産の管理その他団体としての主要な点が確定していること

(最判昭39.10.15)

権利能力なき社団の効果

権利能力なき社団の対内関係(組織に関する事項)

団体の組織に関する事項(社員の資格、社員総会、代表方法など)について、法人の組織に関する規定の類推適用が認められることがある。(最判昭55.2.8参照)

権利能力なき社団の対外関係(財産関係に関する事項)

財産の帰属主体

権利能力なき社団は、法人格を有していない以上、その財産は、構成員全員に共同帰属すると、解さざるを得ない。
もっとも、経済的、実質的にはその財産は、社団の目的のために、存在し利用されているので、社団に帰属しているとみるべきである。

そこで、権利能力なき社団の財産は、構成員全員に総有的に帰属するものと解される。(総有説
(最判昭32.11.14など)

総有とは、社団の財産は構成員全員が共同で所有しつつ、各構成員はその財産について、持分を有さず、社団の定めに従って財産を使用、収益できるにとどまるとする。

ただし、「不動産の公示」については、法人と同様の扱いは認められていない。

権利能力なき社団の取引

権利能力なき社団の代表者が団体の名において行った行為の効果は、構成全員に総有的に帰属する。
(最判昭39.10.15)

団体財産に対する構成員の権利

各構成員には権利能力なき社団の財産(総有財産)について持分がない。

団体債務に関する構成員の責任

構成員各自は、取引の相手方に対し、直接には個人的債務ないし責任を負わない。
(最判昭48.10.9)

不動産の公示方法

登記官は、形式的審査権しか有しないので、社団名義の登記を認めると、虚偽人名義の登記を許し、不動産取引の安全を図ろうとする不動産登記の趣旨に反し、また、強制執行や滞納処分の潜脱手段とされるおそれもあり、社団名義の登記は認められないと解される。

しかし、常に構成員全員の共同所有名義の登記を要求するのは現実的ではない。
そこで、構成員全員からの受託者たる地位において、代表者が自己名義で登記できると解される。
(最判昭47.6.2)

不法行為による責任

権利能力なき社団の代表者が、職務を執行するにつき不法行為を行った場合は、一般法人法78条を準用して社団の不法行為責任を肯定するのが通説となっている。

参考文献)民法総則「第2版」 原田 昌和 他(著)(日本評論社)、新プリメール民法1 民法入門・総則〔第3版〕中田 邦博 他(著)(法律文化社)、C-Book 民法I〈総則〉 改訂新版(東京リーガルマインド)

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