民法を学ぼう!「夫婦財産制・法定財産制(3)」

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司法・法務

日常家事債務の連帯責任(民法761条)

(日常の家事に関する債務の連帯責任)
第761条 夫婦の一方が日常の家事に関して第三者と法律行為をしたときは、他の一方は、これによって生じた債務について、連帯してその責任を負う。ただし、第三者に対し責任を負わない旨を予告した場合は、この限りでない。
(民法・e-Gov法令検索)

夫婦共同生活の維持に欠かせない契約を、法定財産制に服する夫婦の一方が第三者と結んだとする。
この費用は760条により夫婦間で分担しなければならないとしても、762条が別産制を採用しているので、契約から生じる債務は、契約を結んだ一方のみに帰属する。しかし、第三者としては、夫婦が共同で責任を負ってくれるものと期待するのが通常である。そこで、取引の相手方の保護の観点から761条が規定されている。

なお、「連帯してその責任を負う」とは、夫婦が「連帯して債務を負担する」と解される。

(連帯債務者に対する履行の請求)
第436条 債務の目的がその性質上可分である場合において、法令の規定又は当事者の意思表示によって数人が連帯して債務を負担するときは、債権者は、その連帯債務者の一人に対し、又は同時に若しくは順次に全ての連帯債務者に対し、全部又は一部の履行を請求することができる。
(民法・e-Gov法令検索)

ただし、第三者に対し責任を負わない旨を予告した場合は、連帯債務は発生しない。

「日常の家事」の範囲

通説は、個々の行為を個々の夫婦ごとに判断すべきものとする。

判例は、通説の考え方をベースとしながら、「同条が夫婦の一方と取引関係に立つ第三者の保護を目的とする規定であることに鑑み、単にその法律行為をした夫婦の共同生活の内部的な事情やその行為の個別的な目的のみを重視して判断すべきではなく、さらに客観的に、その法律行為の種類、性質等をも充分に考慮して判断すべきである。」とする。(最判昭和44.12.18民集 第23巻12号2476頁

連帯責任と代理権

日常家事の範囲において、夫婦相互の代理権が認められるかどうかについては、争いがある。

判例・通説は、「民法761条は、夫婦が相互に日常の家事に関する法律行為につき他方を代理する権限を有することをも規定しているものと解すべきである。と解する。(最判昭和44.12.18民集 第23巻12号2476頁

もっとも、配偶者が所有する不動産の処分までもが日常の家事に含まれるとは考えられていない。

日常の家事の範囲を超える行為と第三者の保護

判例の立場

「しかしながら、その反面、夫婦の一方が右のような日常の家事に関する代理権の範囲を越えて第三者と法律行為をした場合においては、その代理権の存在を基礎として広く一般的に民法110条所定の表見代理の成立を肯定することは、夫婦の財産的独立をそこなうおそれがあつて、相当でないから、夫婦の一方が他の一方に対しその他の何らかの代理権を授与していない以上、当該越権行為の相手方である第三者においてその行為が当該夫婦の日常の家事に関する法律行為の範囲内に属すると信ずるにつき正当の理由のあるときにかぎり民法110条の趣旨を類推適用して、その第三者の保護をはかれば足りるものと解するのが相当である。」(最判昭和44.12.18民集 第23巻12号2476頁

参考)家族法[第4版]NBS (日評ベーシック・シリーズ)日本評論社

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