民法を学ぼう「取得時効②」

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司法・法務

要件

何年にもわたり、他人の物を自己の物であると思い、これを使用している状態が続いていた場合、そのような状態を根拠として権利の取得を認めるのが、「取得時効」である。

所有権以外の財産権などの取得時効

取得時効は、所有権以外の財産権(民法163条)にも認められる。

(所有権以外の財産権の取得時効)
第百六十三条 所有権以外の財産権を、自己のためにする意思をもって、平穏に、かつ、公然と行使する者は、前条の区別に従い二十年又は十年を経過した後、その権利を取得する。
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この財産権は、性質上、継続して行使することができる権利に限定される。
所有権以外の物権、特許権や著作権などの知的財産権、利用権の性質を有する債権などに認められる。

所有権以外の財産権の典型例は、不動産賃借権である。
例えば、民法163条に基づいて不動産賃貸借を時効取得するためには。目的物の占有が不動産賃貸借という財産権の行使としての占有でなければならない。
そのために、土地の継続的な用益という外形的事実が存在して、かつそれが、賃借の意思に基づくことが、客観的に表現されていなければならない。

一方、親子関係など身分上の権利や解除権や取消権などの形成権は、取得時効の対象にならない。

また、一回的な給付を目的とする債権についても、取得時効の対象にならない。

他主占有から自主占有に変わる場合

他主占有は、取得時効が認められることはない。

しかし、以下の通り、他主占有が自主占有に変わる場合がある。(民法185条)

  1. 占有者が自分に占有させた者に対して、所有の意思があることを表示した場合
  2. 「新たな権限」によって、所有の意思を持って占有した場合
(占有の性質の変更)
第百八十五条 権原の性質上占有者に所有の意思がないものとされる場合には、その占有者が、自己に占有をさせた者に対して所有の意思があることを表示し、又は新たな権原により更に所有の意思をもって占有を始めるのでなければ、占有の性質は、変わらない。
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なお、占有者は、所有の意思をもって、善意で、平穏に、かつ、公然と占有をするものと推定する。(民法186条)
したがって、占有者の占有が他主占有であると主張する者が、「占有者に所有の意思がないこと」の証明責任を負う。

参考文献)民法総則「第2版」 原田 昌和 他著 (日本評論社)、C-Book 民法I〈総則〉 改訂新版(東京リーガルマインド)

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