鎮咳去痰薬
咳が生じる仕組み
気道に吸い込まれた埃(ほこり)や塵(ちり)などの異物が気道粘膜の線毛運動によって排出されないとき、飲食物等が誤って気管に入ってしまったとき、又は、冷たい空気や刺激性のある蒸気などを吸い込んだときなど、それらを排除しようとして反射的に咳が出る。このように咳は、気管や気管支に何らかの異変が起こったときに、その刺激が中枢神経系に伝わり、延髄にある咳嗽(がいそう)中枢の働きによって引き起こされる反応である。したがって、咳はむやみに抑え込むべきではないが、長く続く咳せきは体力の消耗や睡眠不足をまねくなどの悪影響もある。
痰が生じる仕組み
呼吸器官に感染を起こしたときや、空気が汚れた環境で過ごしたり、タバコを吸いすぎたときなどには、気道粘膜からの粘液分泌が増えるが、その粘液に気道に入り込んだ異物や粘膜上皮細胞の残骸などが混じって痰となる。痰が気道粘膜上に滞留すると呼吸の妨げとなるため、反射的に咳が生じて痰を排除しようとする。
代表的な配合成分等、主な副作用
鎮咳成分
延髄の咳嗽(そう)中枢に作用する。
成分
麻薬性
コデインリン酸塩水和物、ジヒドロコデインリン酸塩
非麻薬性
ノスカピン、ノスカピン塩酸塩水和物、デキストロメトルファン臭化水素酸塩水和物、チペピジンヒベンズ酸塩、ジメモルファンリン酸塩、クロペラスチン塩酸塩、クロペラスチンフェンジゾ酸塩
コデインリン酸塩水和物、ジヒドロコデインリン酸塩
- 長期連用や大量摂取によって倦けん怠感や虚脱感、多幸感等が現れることがあり、薬物依存につながるおそれがある。
- 妊娠中に摂取された場合、吸収された成分の一部が血液-胎盤関門を通過して胎児へ移行する
- 母乳移行により乳児でモルヒネ中毒が生じたとの報告がある。
- 胃腸の運動を低下させる作用も示し、副作用として便秘が現れることがある。
- 12歳未満の小児等に使用しない。
気管支拡張成分
アドレナリン作動成分
交感神経系を刺激して気管支を拡張させる作用を示し、呼吸を楽にして咳や喘息の症状を鎮める。
成分
メチルエフェドリン塩酸塩、メチルエフェドリンサッカリン塩、トリメトキノール塩酸塩水和物、メトキシフェナミン塩酸塩
一般的に心悸亢進や血圧上昇、血糖値上昇を招きやすいので、心臓病、高血圧、糖尿病又は甲状腺機能亢進症の診断を受けた人では、症状を悪化させるおそれがある。
メチルエフェドリン塩酸塩、メチルエフェドリンサッカリン塩
- 中枢神経系に対する作用が他の成分に比べ強いとされ、依存性がある成分である。
- 定められた用法用量の範囲内で乳児への影響は不明であるが、吸収された成分の一部が乳汁中に移行することが知られている。
キサンチン系成分
自律神経系を介さずに気管支の平滑筋に直接作用して弛し緩させ、気管支を拡張させる。中枢神経系を興奮させる作用を示す。また、キサンチン系成分は心臓刺激作用を示し、副作用として動悸が現れることがある。
成分
ジプロフィリン
甲状腺機能障害又はてんかんの診断を受けた人では、症状の悪化を招くおそれがあり、使用する前にその適否につき、治療を行っている医師又は処方薬の調剤を行った薬剤師に相談がなされるべきである。
去痰成分
粘液成分の含量比を調整し痰の切れを良くする。
成分
気道粘膜からの粘液の分泌を促進する作用を示すもの(グアイフェネシン、グアヤコールスルホン酸カリウム、クレゾールスルホン酸カリウム)
たんの中の粘性タンパク質を溶解・低分子化して粘性を減少させるもの(エチルシステイン塩酸塩、メチルシステイン塩酸塩、カルボシステイン)
粘液成分の含量比を調整し痰たんの切れを良くするもの(カルボシステイン)
粘液分泌促進作用・溶解低分子化作用・線毛運動促進作用を示すもの(ブロムヘキシン塩酸塩)
抗炎症成分
気道の炎症を和らげる。
成分
トラネキサム酸、グリチルリチン酸二カリウム
抗ヒスタミン成分
咳や喘息、気道の炎症は、アレルギーに起因することがあり、鎮咳成分や気管支拡張成分、抗炎症成分の働きを助ける。
気道粘膜での粘液分泌を抑制することで痰が出にくくなることがある。
成分
クロルフェニラミンマレイン酸塩、クレマスチンフマル酸塩、カルビノキサミンマレイン酸塩
殺菌消毒成分
口腔咽喉薬の効果を兼ねたトローチ剤やドロップ剤では、殺菌消毒成分が配合されている場合がある。基本的に他の配合成分は腸で吸収され、循環血液中に入って薬効をもたらすのに対し、殺菌消毒成分は口腔内及び咽頭部において局所的に作用する。
成分
セチルピリジニウム塩化物
(参考)改訂版 この1冊で合格! 石川達也の登録販売者 テキスト&問題集 (KADOKAWA)、
登録販売者試験問題作成に関する手引き(令和5年4月)(厚生労働省)
コメント