民法を学ぼう!「 占有権(1)」

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司法・法務

占有権は物権とされている。 しかし、物の排他的支配を内容とする所有権などの物権とは異なる。 占有に関する規定は、占有権の取得 (180条~187条)、占有権の効力 (188条~202条)、占有権の消滅 (203条・204条)、準占有 (205条)の4つに分けられている。 占有を単一の視点から捉えることはできない。占有にはさまざまな内容が含まれるからである。


(占有権の取得)
180条 占有権は、自己のためにする意思をもって物を所持することによって取得する。
(代理占有)
181条 占有権は、代理人によって取得することができる。
(現実の引渡し及び簡易の引渡し)
182条 占有権の譲渡は、占有物の引渡しによってする。
2 譲受人又はその代理人が現に占有物を所持する場合には、占有権の譲渡は、当事者の意思表示のみによってすることができる。
(占有改定)
183条 代理人が自己の占有物を以後本人のために占有する意思を表示したときは、本人は、これによって占有権を取得する。
(指図による占有移転)
184条 代理人によって占有をする場合において、本人がその代理人に対して以後第三者のためにその物を占有することを命じ、その第三者がこれを承諾したときは、その第三者は、占有権を取得する。
(占有の性質の変更)
185条 権原の性質上占有者に所有の意思がないものとされる場合には、その占有者が、自己に占有をさせた者に対して所有の意思があることを表示し、又は新たな権原により更に所有の意思をもって占有を始めるのでなければ、占有の性質は、変わらない。
(占有の態様等に関する推定)
186条 占有者は、所有の意思をもって、善意で、平穏に、かつ、公然と占有をするものと推定する。
2 前後の両時点において占有をした証拠があるときは、占有は、その間継続したものと推定する。
(占有の承継)
187条 占有者の承継人は、その選択に従い、自己の占有のみを主張し、又は自己の占有に前の占有者の占有を併せて主張することができる。
2 前の占有者の占有を併せて主張する場合には、その瑕疵をも承継する。


(占有物について行使する権利の適法の推定)
188条 占有者が占有物について行使する権利は、適法に有するものと推定する。
(善意の占有者による果実の取得等)
189条 善意の占有者は、占有物から生ずる果実を取得する。
2 善意の占有者が本権の訴えにおいて敗訴したときは、その訴えの提起の時から悪意の占有者とみなす。
(悪意の占有者による果実の返還等)
190条 悪意の占有者は、果実を返還し、かつ、既に消費し、過失によって損傷し、又は収取を怠った果実の代価を償還する義務を負う。
2 前項の規定は、暴行若しくは強迫又は隠匿によって占有をしている者について準用する。
(占有者による損害賠償)
191条 占有物が占有者の責めに帰すべき事由によって滅失し、又は損傷したときは、その回復者に対し、悪意の占有者はその損害の全部の賠償をする義務を負い、善意の占有者はその滅失又は損傷によって現に利益を受けている限度において賠償をする義務を負う。ただし、所有の意思のない占有者は、善意であるときであっても、全部の賠償をしなければならない。
(即時取得)
192条 取引行為によって、平穏に、かつ、公然と動産の占有を始めた者は、善意であり、かつ、過失がないときは、即時にその動産について行使する権利を取得する。
(盗品又は遺失物の回復)
193条 前条の場合において、占有物が盗品又は遺失物であるときは、被害者又は遺失者は、盗難又は遺失の時から二年間、占有者に対してその物の回復を請求することができる。
194条 占有者が、盗品又は遺失物を、競売若しくは公の市場において、又はその物と同種の物を販売する商人から、善意で買い受けたときは、被害者又は遺失者は、占有者が支払った代価を弁償しなければ、その物を回復することができない。
(動物の占有による権利の取得)
195条 家畜以外の動物で他人が飼育していたものを占有する者は、その占有の開始の時に善意であり、かつ、その動物が飼主の占有を離れた時から一箇月以内に飼主から回復の請求を受けなかったときは、その動物について行使する権利を取得する。
(占有者による費用の償還請求)
196条 占有者が占有物を返還する場合には、その物の保存のために支出した金額その他の必要費を回復者から償還させることができる。ただし、占有者が果実を取得したときは、通常の必要費は、占有者の負担に帰する。
2 占有者が占有物の改良のために支出した金額その他の有益費については、その価格の増加が現存する場合に限り、回復者の選択に従い、その支出した金額又は増価額を償還させることができる。ただし、悪意の占有者に対しては、裁判所は、回復者の請求により、その償還について相当の期限を許与することができる。
(占有の訴え)
197条 占有者は、次条から第二百二条までの規定に従い、占有の訴えを提起することができる。他人のために占有をする者も、同様とする。
(占有保持の訴え)
198条 占有者がその占有を妨害されたときは、占有保持の訴えにより、その妨害の停止及び損害の賠償を請求することができる。
(占有保全の訴え)
199条 占有者がその占有を妨害されるおそれがあるときは、占有保全の訴えにより、その妨害の予防又は損害賠償の担保を請求することができる。
(占有回収の訴え)
200条 占有者がその占有を奪われたときは、占有回収の訴えにより、その物の返還及び損害の賠償を請求することができる。
2 占有回収の訴えは、占有を侵奪した者の特定承継人に対して提起することができない。ただし、その承継人が侵奪の事実を知っていたときは、この限りでない。
(占有の訴えの提起期間)
201条 占有保持の訴えは、妨害の存する間又はその消滅した後一年以内に提起しなければならない。ただし、工事により占有物に損害を生じた場合において、その工事に着手した時から一年を経過し、又はその工事が完成したときは、これを提起することができない。
2 占有保全の訴えは、妨害の危険の存する間は、提起することができる。この場合において、工事により占有物に損害を生ずるおそれがあるときは、前項ただし書の規定を準用する。
3 占有回収の訴えは、占有を奪われた時から一年以内に提起しなければならない。
(本権の訴えとの関係)
202条 占有の訴えは本権の訴えを妨げず、また、本権の訴えは占有の訴えを妨げない。
2 占有の訴えについては、本権に関する理由に基づいて裁判をすることができない。



(占有権の消滅事由)
203条 占有権は、占有者が占有の意思を放棄し、又は占有物の所持を失うことによって消滅する。ただし、占有者が占有回収の訴えを提起したときは、この限りでない。
(代理占有権の消滅事由)
204条 代理人によって占有をする場合には、占有権は、次に掲げる事由によって消滅する。
一 本人が代理人に占有をさせる意思を放棄したこと。
二 代理人が本人に対して以後自己又は第三者のために占有物を所持する意思を表示したこと。
三 代理人が占有物の所持を失ったこと。
2 占有権は、代理権の消滅のみによっては、消滅しない。



205条 この章の規定は、自己のためにする意思をもって財産権の行使をする場合について準用する。

民法(e-Gov法令検索)

占有権とは

占有・占有権

財布を持っている、部屋の中にレンタルDVD が置いてあるなど、物を事実上支配していることを占有という。 占有は所有とは異なる。 占有は、所有権、賃借権など実体法上の適法な権利 (本権)に基づきなされることが多い。しかし、窃盗者による占有のように、本権に基づかないこともある。 民法上、占有 は一定の範囲で保護される。 しかも、窃盗者の占有のように、 本権に基づかない占有にも保護が与えられる点に特徴がある。

ところで、民法には 「占有」 と 「占有権」 という2つの用語が出てくる。しかし、この2つの言葉は明確に使い分けられていない。 理論的にいえば、占有が成立すれば、占有権を取得することになり、占有権に認められるさまざまな効果を享受できることになる。 結局、「占有」 に対してさまざまな効果が認められるといって差し支えない。 そこで、以下では、主として占有という言葉を用いることとする。

占有の効力

民法上、占有が成立すると、次のような効力が与えられる。

占有の訴え 

占有に対する侵害がなされた場合には、これを排除するために占有の訴えが認められる。占有そのものを保護するためである。

不法占有者の果実収取権 

不法占有者でも、物から生じた果実の収取が認められることがある。

本権の推定

占有によって適法な権利を有していることが推定されるなど物をめぐる紛争において有利に取り扱われる。

本権の取得

時効取得・即時取得など、一定の占有の継続・開始によ り、所有権などの本権の取得が認められる。

以上のうち、 占有の訴えが、占有に対する保護としてもっとも重要である。

参考)物権法[第3版] NBS (日評ベーシック・シリーズ) 日本評論社


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