民法の過去問を解いてみよう(賃貸管理士:敷金)

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不動産

今回のテーマは、「敷金」である。

それでは、「賃貸不動産経営管理士」試験で出題された民法の過去問にチャレンジしてみよう。

【問 20】 敷金に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。 
 
1 貸主は、建物明渡し後でなければ、敷金を未払賃料に充当することができない。
2 敷金は、賃貸借契約上の債務を担保するための金銭であるから、貸主との合意があっても賃貸借契約の締結後に預け入れることができない。
3 貸主が建物を借主に引き渡した後、第三者に当該建物を売却し、所有権移転登記を完了した場合、特段の事情がない限り、敷金に関する権利義務は当然に当該第三者に承継される。 
4 賃貸借契約が終了し、建物が明け渡された後、借主が行方不明となったことにより、借主に対し敷金の充当の通知ができない場合、貸主は敷金を未払賃料や原状回復費用に充当することができない。

賃貸不動産経営管理士試験 令和3年11月21日 問題
正解:3

1 誤り。 賃貸人は、賃借人が賃貸借に基づいて生じた金銭の給付を目的とする債務を履行しないときは、敷金をその債務の弁済に充てることができる。(622条の2第2項前段)

民法では、「賃貸借に基づいて生じた金銭の給付を目的とする債務を履行しないとき」と規定しているので、建物明渡しの後に限らず充当できる

第四款 敷金
第六百二十二条の二 賃貸人は、敷金(いかなる名目によるかを問わず、賃料債務その他の賃貸借に基づいて生ずる賃借人の賃貸人に対する金銭の給付を目的とする債務を担保する目的で、賃借人が賃貸人に交付する金銭をいう。以下この条において同じ。)を受け取っている場合において、次に掲げるときは、賃借人に対し、その受け取った敷金の額から賃貸借に基づいて生じた賃借人の賃貸人に対する金銭の給付を目的とする債務の額を控除した残額を返還しなければならない。
一 賃貸借が終了し、かつ、賃貸物の返還を受けたとき。
二 賃借人が適法に賃借権を譲り渡したとき。
2 賃貸人は、賃借人が賃貸借に基づいて生じた金銭の給付を目的とする債務を履行しないときは、敷金をその債務の弁済に充てることができる。この場合において、賃借人は、賃貸人に対し、敷金をその債務の弁済に充てることを請求することができない。

民法・e-Gov法令検索

2 誤り。敷金は、賃貸借契約とは別個の契約(敷金設定契約)により交付されるものである。したがって、賃貸借契約締結後に預け入れる合意も有効である。

3 正しい。賃貸借の対抗要件を備えた場合において、その不動産が譲渡されたときは、その不動産の賃貸人たる地位は、その譲受人に移転する。(605条の2第1項)そして、賃貸人たる地位が譲受人又はその承継人に移転したときは、敷金の返還に係る債務は、譲受人又はその承継人が承継する。(605条の2第4項、1項)

4 誤り。賃貸人は、敷金を受け取っている場合において、賃貸借が終了し、かつ、賃貸物の返還を受けたときは、賃借人に対し、その受け取った敷金の額から賃貸借に基づいて生じた賃借人の賃貸人に対する金銭の給付を目的とする債務の額を控除した残額を返還しなければならない。(622条の2第1項1号)すなわち、目的物の返還時に残存する賃料債権等は敷金が存在する限度において、その充当により当然に消滅する。したがって、当事者の意思表示を必要とするものではない。

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