先回に続いて、古文のご紹介である。先回の記事では、大学入試によく出る出典としては、「徒然草」、「枕草子」、「源氏物語」、そして、「平家物語」であるとご紹介した。さらに、この中で、「何か一冊をご自分のものにできれば実力向上は間違いない。」と付け加えた。
そこで、今回は、「徒然草」をご紹介しよう。
「新明解古典シリーズ 10 徒然草(三省堂)以下本書という」である。
新明解古典シリーズ 10 徒然草
「新明解古典シリーズ」は、高校で学習する参考書として、古文の学習に役立てられるように、その問題点を探り、解説を加えて、古文を読解・鑑賞することができるように編集したものである。
したがって、本書は、「徒然草」の全ての段を扱ってはいない。大学入試用としては必要十分であろう。本書で「徒然草」のすばらしさを再発見できたなら、全段に挑戦してみることもおすすめである。
古文の学習は、何と言っても古文の本文をよく読むことから始まる。今回は、有名な序段を取り上げる。
つれづれなるままに、日くらし、硯にむかひて、心に移りゆくよしなし事を、そこはかとなく書きつくれば、あやしうこそものぐるほしけれ。
徒然草(序段)
つれづれなるままに
下の「書きつくれば」に係る。「つれづれなる」(形容動詞・連体形)の終止形「つれづれなり」は、何かしたいがすることのない退屈なさま。「ままに」(形容名詞+格助詞)任せて。
形容動詞の活用
形容動詞には「ナリ活用」と「タリ活用」の2つの活用の種類がある。動詞ラ変形の活用を取るが、連用形にそれぞれ「に」と「と」がある。
活用種類 | 語幹 | 活用語尾 | |||||
未然形 | 連用形 | 終止形 | 連体形 | 已然形 | 命令形 | ||
ナリ活用 | 静か | なら | なり に | なり | なる | なれ | なれ |
タリ活用 | 堂々 | たら | たり と | たり | たる | たれ | たれ |
そこはかとなく
「そこはかとなく」は、複合の形容詞「そこはかとなし」の連用形。とりとめもなく。
形容詞の活用
形容詞には「ク活用」と「シク活用」の2つの活用の種類がある。それぞれにカリ活用・シカリ活用が伴う。
活用種類 | 語幹 | 活用語尾 | |||||
未然形 | 連用形 | 終止形 | 連体形 | 已然形 | 命令形 | ||
ク活用 | よ | く から | く かり | し 〇 | き かる | けれ 〇 | 〇 かれ |
シク活用 | うつく | しく しから | しく しかり | し 〇 | しき しかる | しけれ 〇 | 〇 しかれ |
あやしうこそものぐるほしけれ
「あやしう」は形容詞「あやし」の連用形「あやしく」の音便形。「あやし」にはいろいろな意味があるが、ここでは、「不思議だ。異常だ。」の意。
「ものぐるほしけれ」は形容詞「ものぐるほし(気違いじみた気がする)」の已然形で、こその結び。
通釈
(何かしたいがすることもない)退屈なままに任せて、一日中、硯に向かって、心の中に次から次へと移ってゆくたわいないことを、とりとめもなく書きつけてみると、(まことに)妙に気違いじみてくることだ。
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