本ブログのテーマのひとつは「社会人の学びなおし」である。みなさまもおそらく一度は「古文」を学ばれたと思われる。かと言って、専門家にでもならない限り、今でも「古文」の勉強を続けている方は少数であろう。この記事は、その他の大多数と思われる方々を対象とする。「古文」を学ぶことは、ご自分の「アイデンティティ」を理解するうえで大切なことではないだろうか。それは、「歴史」を学ぶことと同じと言える。今の「自分」という存在を形作るには、「歴史」があり、そして「文化」があったと考えることができる。そして、その文化を支えたのが「古文」である。
このようにお考えていただくと「古文」を学ぶことは意味あることだとご理解いただけるのではないだろうか。
それでは、大学入試レベルの問題演習を通じて「古文」に親しんでみよう。今回は、「古文」の問題集をご紹介する。
「古文上達 読解と演習56(小泉貴著・Z-KAI(2021.10.10増訂))以下本書という」である。
古文上達 読解と演習56
本書は、入門編、基礎編、演習編の3部構成である。
入門編は、古文上達へ向かう心得、入試古文の出題についての基礎的情報、古文の周辺知識の他、文法と単語の基礎的事項を整理して、詳しく解説している。お手元に古語辞典を用意していただければ準備万端である。
基礎編は入試問題の改題による例題解説形式。演習編は入試問題をそのまま採用する。いずれも解説部分には解答の他、全訳、解答のポイント、単語チェック、文法ワンポイント、出典など、詳しく解説している。
大学入試によく出る出典
「徒然草」、「枕草子」、「源氏物語」、そして、「平家物語」である。いずれも誰しも一度ならず聞いたことがあるであろう我が国の古典の名著である。「古文を学ぶ」ことは、これらの古典を原文で味わうことができる貴重な体験となる。そして、この中で、何か一冊をご自分のものにできれば実力向上は間違いない。
文法と単語の基礎的な理解は必須
古文は言うまでもなく現代の我々が使っている言葉とは違う。英語を覚えるが如く文法と単語を覚える努力が必要である。ただ、我々の使う言葉のもとになっているので英語よりは馴染みやすいかもしれない。
- 動詞・形容詞・形容動詞の活用
- 係り結びの法則
- 主な現古異義語
問題演習に取り組む前に先ず理解しておくのは上記の三点となるだろう。
動詞の活用
活用のうち、本記事では、例として「動詞の活用」をご紹介する。「動詞の活用」は古文読解の基本になる知識なので、早めに覚えておこう。
動詞には、9種の活用がある。すなわち、「四段活用」「上一段活用」「上二段活用」「下一段活用」「下二段活用」「カ行変格活用」「サ行変格活用」「ナ行変格活用」「ラ行変格活用」の9種類である。
記憶すべき語と活用
このうち、「上一段活用」「下一段活用」カ行変格活用」「サ行変格活用」「ナ行変格活用」「ラ行変格活用」は属する動詞の数が少ないので暗記しよう。
活用の種類 | 語幹 | 活用語尾 | 備考 | |||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
未然形 | 連用形 | 終止形 | 連体形 | 已然形 | 命令形 | |||
上一段 | 着る | き | き | きる | きる | きれ | きよ | 「着る」の一語 |
似る | に | に | にる | にる | にれ | によ | ||
干(ひ)る | ひ | ひ | ひる | ひる | ひれ | ひよ | ||
見る | み | み | みる | みる | みれ | みよ | ||
射る | い | い | いる | いる | いれ | いよ | ||
居る | ゐ | ゐ | ゐる | ゐる | ゐれ | ゐよ | ||
下一段 | 蹴る | け | け | ける | ける | けれ | けよ | 「蹴る」の一語 |
カ行変格 | 来(く) | こ | き | く | くる | くれ | こ(よ) | 「来」の一語 |
サ行変格 | す | せ | し | す | する | すれ | せよ | |
ナ行変格 | 死ぬ | な | に | ぬ | ぬる | ぬれ | ね | |
ラ行変格 | あり | ら | り | り | る | れ | れ |
下に「ず」をつけて判別できる活用
下に「ず」をつけて
- ア段になったら・・・「四段活用」(書かず・思はず)
- イ段になったら・・・「上二段活用」(起きず・落ちず)
- エ段になったら・・・「下二段活用」(受けず・捨てず)
係り結びの法則
古文独特の法則である。
「係り結び」は,文の内容を強調したり,疑問を表したりするために使います。文中に「ぞ・なむ・や・か・こそ」(係助詞)が出てきたら,「文末」の「活用形」が「連体形」や「已然形」になるという決まりです。「係助詞」があるかどうかで見分けます。
・「係り結び」…「係りの助詞(係助詞)」と「結びの語」の関係なので「係り結び」と言う。
「ぞ・なむ・こそ」は強調を,「や・か」は疑問を表す。(1)文中の「ぞ・なむ」→文末は「連体形」・意味は強調
(2)文中の「や・か」→文末は「連体形」・意味は疑問(反語)
(3)文中の「こそ」→文末は「已然形(いぜんけい)」・意味は強調※普通は文末には「終止形」がきます。「係助詞」が出てきたら文末の活用形が変わります。
[係り結びの例]
進研ゼミ中学講座より抜粋
・普通の文 :「朝はひときはめでたし。」…「朝は一段とすばらしい。」という内容。
↓これを強調して
・係り結びの文:「朝ぞひときはめでたき。」…「朝こそは一段とすばらしい。」と,内容を強調しています。
主な現古異義語
一例を示しておく。
古語 | 意味 | 現代語の意味 |
---|---|---|
あからさま | ちょっと。一時的。 | むき出し。 |
あく | 満足する。十分である。 | 飽きる。 |
あたらし | 惜しい。もったいない。 | 新しい。 |
ことわる | 判断を下す。 | 辞退する。 |
まめまめし | 実用的だ。 | 骨惜しみしない。 |
やさし | はずかしい。優雅だ。 | 思いやりがある。 |
コメント