はじめに
「家を建てるなら、その土地も自分のものでなければならない」
このように考える人は多いのではないだろうか。
もちろん、自分が所有していない土地に建物を建て、その土地を利用することも可能である。
そのための代表的な権利の一つが、地上権である。
例えば、
土地はAさん所有。
その土地を利用して建物を所有する権利はBさんが持っている。
という状態である。
このように、地上権は、土地の所有者と、その土地を利用する人が別になる仕組みである。
今回は、地上権の基本を身近な例から整理していこう。
1.所有権の次に学ぶ「用益物権」とは?
これまで「所有権」について学んできた。
所有権とは、簡単にいえば、自分の物を使用・収益・処分できる権利である。
では、自分の物ではない土地を利用したい場合はどうだろうか。
例えば、
- 他人の土地に建物を建てたい
- 他人の土地に施設を設置したい
- 他人の土地を通行したい
といった場合である。
民法には、このように他人の土地を利用するための権利が用意されている。
その代表的なものが用益物権である。
用益物権には、次のようなものがある。
- 地上権
- 地役権
- 永小作権
- 入会権
今回は、地上権を取り上げる。
地上権は「物権」である
物権とは、簡単にいえば、物を直接支配する権利である。代表的な物権が所有権であろう。
そして、地上権も物権である。
地上権は、土地所有者との単なる契約上の約束ではなく、法律上認められた物権である。
地上権者は土地そのものを所有しているわけではない。
しかし、地上権という物権に基づいて、その土地を使用することができる。
この「物権である」という性質は、地上権を理解するうえで重要なポイントである。
地上権の特徴①
地上権について、民法265条では次のように定めている。
(地上権の内容)
第二百六十五条 地上権者は、他人の土地において工作物又は竹木を所有するため、その土地を使用する権利を有する。
(民法・e-GOV法令検索)
少し難しく感じるかもしれないので、条文を分けて考えてみよう。
「他人の土地」
まず、その土地は自分の所有物ではない。土地の所有者は別の人ということ。
「工作物又は竹木を所有するため」
その土地を利用する目的である。
例えば、
- 建物を建てる
- 工作物を設置する
- 竹木を所有する
である。
「その土地を使用する権利」
土地そのものを所有するわけでないが、土地を利用する権利を持つ。
つまり、地上権を簡単に表現すると、
「土地は他人のものだが、その土地を利用して工作物や竹木を所有するための権利」
と考えるとわかりやすい。
3.具体例で考えてみよう
例えば、Aさんが土地を所有しているとする。
一方、Bさんはその土地に自分の家を建てたい。
そこで、AさんとBさんとの間で地上権を設定したとする。
すると、
- 土地 → Aさんが所有
- 地上権 → Bさんのもの
- 建物 → Bさんが所有
という状態となる。
つまり、
土地の所有者と建物の所有者が違っていてもよい。
のである。
これも地上権を理解するうえで重要なポイントである。
4.地上権は「建物」だけではない
ここまでの説明だと地上権は、
「他人の土地に家を建てるための権利」
と思われるもしれない。
しかし、地上権の目的は住宅だけではない。民法265条では「工作物又は竹木」と規定している。したがって、例えば、
- 建物
- 鉄道施設
- 地下構造物
- 発電設備
- その他の工作物
などを所有する目的で土地を利用することも考えられる。
つまり、地上権は、他人の土地に工作物や竹木を所有し、そのために土地を利用するための権利なのである。
地上権の特徴② 原則として譲渡・賃貸ができる
地上権は物権であり、地上権者には強い権利が認められている。
そのため、原則として、地上権者は、土地所有者の承諾を得なくても、地上権を譲渡したり、その地上権を賃貸したりすることができる。
例えば、
Aさんが土地を所有している。
Bさんが地上権を持っている。
Bさんが地上権をCさんに譲渡する。
ということも原則として可能である。
ただし、契約によって一定の制限が設けられる場合もあるため、
「地上権なら何でも完全に自由」
と考えるのは適切ではない。
この特徴は、次回取り上げる土地賃借権との違いを考える際にも重要になる。
地上権の特徴③ 地代は必ず必要なのか?
ここも地上権の重要なポイントである。
「他人の土地を使うのだから、当然、地代を払うのではないか」と思われるかもしれない。
しかし、地上権では、地代の支払いが必ず必要というわけではない。
つまり、
- 地代を支払う地上権
- 無償の地上権
のどちらも考えられる。民法266条が、地上権について「地代を支払わなければならない場合」を想定しているからである。
したがって、
地上権=必ず地代を払う
ではない。
(地代)
第二百六十六条 第二百七十四条から第二百七十六条までの規定は、地上権者が土地の所有者に定期の地代を支払わなければならない場合について準用する。
2 地代については、前項に規定するもののほか、その性質に反しない限り、賃貸借に関する規定を準用する。
(民法・e-GOV法令検索)
今回のまとめ
今回は、地上権の基本について学んだ。
ポイントを整理しておこう。
地上権とは?
他人の土地において、工作物又は竹木を所有するため、その土地を使用する権利
地上権のポイント
- 地上権は用益物権の一つである
- 他人の土地を工作物や竹木を所有する目的で利用できる
- 原則として地上権の譲渡・賃貸ができる
- 地代は必ず必要というわけではない
土地を所有する権利と、土地を利用する権利を別にすることができる。
次回予告
ここまでの説明で
「地上権と土地の賃貸借って、何が違うの?」
と思われた方もいるだろう。
実際、どちらも他人の土地を利用するという点では似ている。
しかし、法律上は、
地上権=物権
土地賃借権=債権
という違いがある。
では、この違いによって何が変わるのだろうか。
次回は、地上権と土地賃借権の違い、さらに「借地権」の意味について整理していく。


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