民法を学ぼう!「地上権(2)」地上権と土地賃借権は何が違う?「借地権」も整理しよう

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司法・法務

はじめに

前回は、地上権とは何かについて学んだ。

地上権とは、簡単にいえば、

他人の土地において、工作物や竹木を所有するため、その土地を使用する権利

であった。

ところで、他人の土地を利用する方法は、地上権だけではない。
土地を借りて建物を建てる場合などには、土地賃借権が利用される。
では、地上権と土地賃借権は何が違うのだろうか。
さらに、法律を学んでいると「借地権」という用語も登場する。

今回は、この3つの用語を整理していこう。


地上権と土地賃借権の違いを整理しよう

まず、この違いを確認しておこう。

地上権土地賃借権
法律上の性質物権債権
根拠となる契約など地上権の設定土地の賃貸借契約
土地の利用地上権に基づいて利用する賃貸借契約に基づいて利用する
譲渡・転貸原則として可能原則として土地所有者の承諾が必要
地代・賃料必ずしも必要ではない原則として賃料が必要

ポイントは、

地上権=物権
土地賃借権=債権

という違いである。

地上権は、物権として認められた土地利用権であり、契約などによって設定される。
一方、土地賃借権は、土地所有者と借主との間の賃貸借契約に基づく権利である。

この違いが、譲渡や転貸などの場面にも表れてくる。


「譲渡」と「転貸」は違う

ここで、混同しやすい言葉を整理しておこう。

譲渡とは?

譲渡とは、自分が持っている権利を別の人に移すことである。

例えば、

Aさん=土地所有者
Bさん=地上権者

という関係があるとする。

Bさんが持っている地上権をCさんに移すと、

Aさん=土地所有者
Cさん=地上権者

という関係になる。

これが地上権の譲渡である。

転貸とは?

転貸とは、土地を借りている人が、その土地をさらに別の人に貸すことである。

例えば、

Aさん=土地所有者
Bさん=土地の賃借人
Cさん=Bさんから土地を借りる人(転貸)

という関係である。

BさんはAさんから土地を借り、その土地をCさんに貸している。
これが転貸である。

したがって、

譲渡=権利そのものを別の人に移す
転貸=借りている土地をさらに別の人に貸す

という違いがある。


土地賃借権は自由に譲渡・転貸できるのか?

土地賃借権については、注意が必要である。

民法612条では、賃借人は、賃貸人の承諾を得なければ、賃借権を譲渡したり、賃借物を転貸したりすることができないと定めている。

(賃借権の譲渡及び転貸の制限)
第六百十二条 賃借人は、賃貸人の承諾を得なければ、その賃借権を譲り渡し、又は賃借物を転貸することができない。
(略)
(民法・e-GOV法令検索

つまり、原則として、

土地賃借権の譲渡・転貸には土地所有者の承諾が必要

ということである。

一方、地上権は、原則として地上権者の意思で譲渡したり、その土地を賃貸したりすることができる。この違いは、前述の地上権は物権、土地賃借権は債権という、それぞれの法律上の性質と関係している。



「借地権」を整理しよう

ここで、さらにややこしい用語が登場する。
それが借地権である。
「借地権」という言葉を聞くと、

「土地を借りる権利だから、土地賃借権のことだろう」

と思われるかもしれない。

しかし、法律上の「借地権」は、それだけを意味するわけではない。
借地借家法2条1号で、借地権を、

建物の所有を目的とする地上権または土地の賃借権

と定義している。

(定義)
第二条 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
一 借地権 建物の所有を目的とする地上権又は土地の賃借権をいう。
(略)
(借地借家法・e-GOV法令検索

つまり、

借地権=建物所有を目的とする地上権または土地賃借権

である。

ここが重要なポイントである。

整理すると、

借地権
├─ 地上権
└─ 土地賃借権

という関係になる。

したがって、

「借地権=土地賃借権」ではない。

地上権も、建物の所有を目的としていれば、借地権に含まれるのである。


なぜ「借地権=土地賃借権」と思ってしまうのか?

では、なぜ「借地権」と聞くと、土地賃借権をイメージしやすいのだろうか。
その理由の一つは、実際の土地利用では、土地を借りて建物を建てるケースが多いからである。

例えば、

土地所有者から土地を借りる
↓
賃料を支払う
↓
その土地に建物を建てる

という利用方法である。

この場合、利用者が持っているのは土地賃借権であり、建物の所有を目的としているため、借地借家法上の「借地権」にも該当する。

一方で、地上権によって建物を所有する場合も、建物所有を目的としていれば借地権に含まれる。

したがって、

「借地権」という用語を見たら、地上権と土地賃借権の両方が含まれる可能性がある

と覚えておこう。


なぜ土地賃借権が利用されるのか?

ここまで読まれると、

「地上権があれば、土地賃借権は必要ないのでは?」

と思われるかもしれない。
しかし、実際には土地賃借権が広く利用されている。これには、「地上権=物権」が関係している。土地賃借権なら、土地所有者にとって、土地を所有したまま(物権を保持)、他人に土地を利用してもらうことができる。しかも、その際、賃料を支払ってもらえる。
このように土地所有者にメリットがあるため、土地賃借権が、主要な土地利用の形になっている。
ただし、土地所有者にとってメリットばかりではない。
借地借家法によって立場が弱くなりがちな「借り手(借地人)」は強く保護される。
そのため、土地所有者にとって以下のような留意点がある。

・普通借地権の更新
最初の契約期間(原則30年)が満了しても、建物がある場合に借地権者が更新を請求すれば、土地所有者が正当事由のある旨異議を述べない限り、契約は更新したものとみなされる。
・建物買取請求権
借地権の存続期間が満了し、契約が更新されない場合には、借地権者は土地所有者に対して建物買取請求権を行使できる。


地上権と土地賃借権を整理しよう

ここまでの内容を、もう一度整理してみよう。

地上権

物権である。

他人の土地において、工作物や竹木を所有するため、その土地を使用する権利である。
原則として、地上権の譲渡や土地の賃貸が可能である。

土地賃借権

債権である。

土地所有者との賃貸借契約に基づいて、土地を利用する権利である。
原則として、賃借権の譲渡や転貸には土地所有者の承諾が必要である。

借地権

建物の所有を目的とする地上権または土地賃借権である。

つまり、

地上権と土地賃借権は別の権利だが、どちらも建物所有を目的とする場合には「借地権」に含まれる。

ここを押さえておけば、3つの用語を混同しにくくなるだろう。


まとめ

今回は、地上権と土地賃借権、そして借地権の関係を整理した。

ポイントは次のとおりである。

  • 地上権は物権
  • 土地賃借権は債権
  • 地上権は原則として譲渡・土地の賃貸ができる
  • 土地賃借権の譲渡・転貸には、原則として土地所有者の承諾が必要
  • 譲渡と転貸は別のものである
  • 借地権とは建物の所有を目的とする地上権または土地賃借権

次回予告

次回は、地上権の中でも少し特殊なものを取り上げる。

テーマは、

「地下も上空も利用できる?区分地上権と法定地上権」

である。

土地の地下や上空を一定の範囲だけ利用する区分地上権。
そして、抵当権の実行による競売などによって土地と建物の所有者が分かれた場合に問題となる法定地上権。少し特殊な2つの制度について、整理していく。

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