民法を学ぼう!「所有権(18)共有(2)共有者の対外関係」

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司法・法務

4 共有者の対外関係

共有物の外部(第三者)との関係において、共有者がどのような権利行使や請求を行えるかについては、請求の内容が「不可分な権利行使(物の返還や妨害排除など)」か「金銭請求などの可分な請求」かによって取扱いが異なる。

また、他の共有者が不法に単独占有している場合など、共有者相互の対外的な権利行使についても、令和3年改正民法(2023年(令和5年)4月1日施行)を踏まえた理解が必要となる。

(1)第三者の不法占拠に対する請求

第三者が共有物を無権原で占拠している場合、各共有者はその第三者に対して以下の請求を行うことができる。

① 共有物全体の返還請求・妨害排除請求(保存行為)

第三者に対して「共有物全体を返還せよ」あるいは「不法占拠をやめよ」と請求する行為は、共有物の現状を維持するための保存行為(252条5項)に該当する。

(共有物の管理)
第二百五十二条 (略)
5 各共有者は、前各項の規定にかかわらず、保存行為をすることができる。
(民法・e-GOV法令検索)

したがって、各共有者は自己の持分割合にかかわらず、単独で共有物全体の返還や妨害排除を請求することができる。他の共有者全員の同意を得たり、全員で共同訴訟を提起したりする必要はない。

② 損害賠償請求・不当利得返還請求(金銭請求)

第三者の不法占拠によって生じた損害の賠償請求や、不当利得の返還請求といった金銭請求については、保存行為には該当しない。

金銭請求については、原則として自己の持分に応じた範囲でのみ請求することができる。判例も、不法占拠者に対する損害賠償請求について、各共有者は自己の持分に応じた割合いにおいてのみ請求できるとしている。

(2)不実の登記に対する請求

第三者が共有物について無効な所有権移転登記を行っている場合などの対応である。

① 不実登記の抹消請求(保存行為)

第三者名義の不実(無効)の登記を抹消して本来の状態に戻す行為は保存行為に該当する。そのため、各共有者は単独で、不実の登記の全部の抹消を請求することができる。

② 真正な登記名義の回復を原因とする所有権移転登記請求に関する留意点

不実の名義人から「真正な登記名義の回復」を原因として共有者全員への所有権移転登記を求める場合、実務上・試験対策上注意が必要である。

判例(最判平成22.4.20【集民 第234号49頁】等)の整理において、「真正な登記名義の回復」を原因とする移転登記請求は、性質上、他の共有者の持分移転請求まで含めて当然に単独で請求できる(保存行為となる)とは限らないとされる。そのため、単純に「不実登記の抹消」と同列の保存行為として単独請求可能と扱うのは避け、確実に保存行為と認められる「不実登記の全部抹消請求」を中心に押さえておくのがよいだろう。

1 甲乙の共有に属する不動産につき,甲乙丙を共有者とする所有権保存登記がされている場合における,甲の丙に対する上記登記のうち丙の持分に関する部分の抹消登記手続請求は,上記部分を実体的権利に合致させるための更正登記手続を求める趣旨を含むものと解することができる。
2 甲乙の共有に属する不動産につき,甲乙丙を共有者とする所有権保存登記がされている場合において,甲は,丙に対し,甲の持分についての更正登記手続を求めることができるにとどまり,乙の持分についての更正登記手続までを求めることはできない。
(最判平成22.4.20)

(3)他の共有者が不法に単独占有している場合

共有者の一人(A)が、他の共有者(B)の同意を得ずに共有物を単独で占有・使用している場合、BはAに対してどのような請求ができるかが問題となる。

① 共有物の明渡請求(原則不可)

BはAに対し、「共有物全体を自分に受け渡せ(明渡せ)」と請求することは原則としてできない(最判昭和41.5.19【民集 第20巻5号947頁】)。

共有物の持分の価格が過半数をこえる者は、共有物を単独で占有する他の共有者に対し、当然には、その占有する共有物の明渡を請求することができない。
(最判昭和41.5.19)

なぜなら、Aも持分に基づく使用権限(249条1項)を物全体に対して有しているからである。
少数持分権者につき、他の共有者を排斥して自分だけが占有する権利はないものの、同時に「まったく占有権限がない第三者」と同列に扱うこともできないためである。

② 使用の対価の償還請求(民法249条2項)

明渡請求は認められないが、BはAに対し、自己の持分を超えて使用している対価の償還を請求することができる。

令和3年改正により明記された民法249条2項に基づき、共有物を使用する共有者は、別段の合意がない限り、他の共有者に対して自己の持分を超える使用の対価(賃料相当額など)を償還する義務を負う

(共有物の使用)
第二百四十九条 各共有者は、共有物の全部について、その持分に応じた使用をすることができる。
2 共有物を使用する共有者は、別段の合意がある場合を除き、他の共有者に対し、自己の持分を超える使用の対価を償還する義務を負う。
(略)
(民法・e-GOV法令検索)

③ 共有物の使用・管理方法の決定(民法252条1項・3項)

持分価格の過半数(252条1項)をもって共有物の使用・管理方法を決定し、単独占有の状態を是正させることができる。

ただし、252条3項には注意が必要である。管理に関する決定が、共有物を使用する共有者に「特別の影響」を及ぼす場合には、その共有者の承諾を得なければならない。

第二百五十二条 共有物の管理に関する事項(次条第一項に規定する共有物の管理者の選任及び解任を含み、共有物に前条第一項に規定する変更を加えるものを除く。次項において同じ。)は、各共有者の持分の価格に従い、その過半数で決する。共有物を使用する共有者があるときも、同様とする。
2 裁判所は、次の各号に掲げるときは、当該各号に規定する他の共有者以外の共有者の請求により、当該他の共有者以外の共有者の持分の価格に従い、その過半数で共有物の管理に関する事項を決することができる旨の裁判をすることができる。
一 共有者が他の共有者を知ることができず、又はその所在を知ることができないとき。
二 共有者が他の共有者に対し相当の期間を定めて共有物の管理に関する事項を決することについて賛否を明らかにすべき旨を催告した場合において、当該他の共有者がその期間内に賛否を明らかにしないとき。
3 前二項の規定による決定が、共有者間の決定に基づいて共有物を使用する共有者に特別の影響を及ぼすべきときは、その承諾を得なければならない。
(略)
(民法・e-GOV法令検索)

【まとめ】共有者の対外関係・請求権の整理

請求の分類具体的請求内容権利行使の範囲・要件
第三者への返還・妨害排除不法占拠者への返還請求など各共有者が単独で共有物全体について請求可能(保存行為)
第三者への不実登記抹消無効登記の抹消請求各共有者が単独で全部抹消を請求可能(保存行為)
第三者への損害賠償・不当利得金銭による賠償・返還請求原則として自己の持分に応じた範囲でのみ請求可能
共有者間の明渡請求他の共有者への不当占有の明渡し原則不可(最判昭和41.5.19)
共有者間の使用対価持分を超える使用への対価請求民法249条2項に基づき、持分を超える使用対価を償還
共有物の使用・管理方法利用ルールの決定・変更原則として持分価格の過半数で決定(※特別の影響を受ける共有者がいる場合はその承諾が必要:252条3項)

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