前回では、建物区分所有の基本となる「専有部分」と「共用部分」の違いについて整理した。
分譲マンションの一室を購入すると、手に入れるのは「自分の部屋(専有部分)」だけではない。
廊下や階段、エレベーターなどの「共用部分」についても持分を有することになり、さらに、マンションが建っている土地を利用するための「敷地利用権」も関係してくる。
今回は、共用部分の持分割合、共用部分の持分と専有部分との一体的な関係、そして専有部分と敷地利用権を分離して処分できない仕組みについて解説する。
なお、本稿では「建物の区分所有等に関する法律」を、「区分所有法」という。
1.共用部分の持分割合はどう決まる?
廊下や階段、エレベーターなどの共用部分は、原則として区分所有者全員の共有に属する。
では、それぞれの区分所有者が持つ共用部分の持分割合は、どのように決まるのだろうか。
原則は「専有部分の床面積の割合」
区分所有法第14条第1項では、共用部分の各共有者の持分について、
各共有者の持分は、その有する専有部分の床面積の割合による
と定めている。
例えば、マンション全体の専有部分の床面積の合計が1,000㎡で、自分の専有部分の床面積が100㎡であれば、原則として共用部分についての持分は100/1,000=10%となる。
ただし、区分所有法第14条では、一部共用部分の床面積の扱いなどについても定められており、さらに規約によって別の割合を定めることも認められている。
(共用部分の持分の割合)
第十四条 各共有者の持分は、その有する専有部分の床面積の割合による。
2 前項の場合において、一部共用部分(附属の建物であるものを除く。)で床面積を有するものがあるときは、その一部共用部分の床面積は、これを共用すべき各区分所有者の専有部分の床面積の割合により配分して、それぞれその区分所有者の専有部分の床面積に算入するものとする。
3 前二項の床面積は、壁その他の区画の内側線で囲まれた部分の水平投影面積による。
4 前三項の規定は、規約で別段の定めをすることを妨げない。
(区分所有法・e-GOV法令検索)
【ポイント】床面積は「内法」で計算する
区分所有法第14条第3項では、持分割合を計算する際の床面積について、壁その他の区画の内側線で囲まれた部分の水平投影面積によると定めている。
これは一般に「内法(うちのり)」による計算と呼ばれる。
したがって、マンションの広告やパンフレットなどで表示される「壁芯面積」と、区分所有法上の持分計算に用いる床面積は、必ずしも一致しない。
なお、区分所有法第14条第4項により、これらの規定とは異なる割合などを管理規約で定めることもできる。
2.共用部分の持分は「専有部分」と切り離せない
ここで重要なのが、共用部分の持分と専有部分との関係である。
民法上の共有では、原則として共有者は自分の持分を処分することができる。
しかし、マンションの共用部分については、区分所有法で特別なルールが設けられている。
区分所有法第15条では、
- 共用部分の持分は、専有部分の処分に従う
- 原則として、専有部分と分離して共用部分の持分だけを処分することはできない
と定めている。
つまり、マンションの「部屋」と「共用部分の持分」は、原則として別々に売買することができないのである。
(共用部分の持分の処分)
第十五条 共有者の持分は、その有する専有部分の処分に従う。
2 共有者は、この法律に別段の定めがある場合を除いて、その有する専有部分と分離して持分を処分することができない。
(区分所有法・e-GOV法令検索)
民法上の共有との違い
民法の共有では、共有者が自己の持分を単独で処分できることが基本となる。
これに対して、区分所有法の共用部分では、マンションという共同住宅を維持するため、専有部分と共用部分の持分を切り離さない仕組みになっている。
例えば、
「自分の部屋は売らずに、共用部分の持分だけを第三者に売る」
といった処分は、原則として認められない。
このように、専有部分と共用部分の持分が一体となっていることが、区分所有法上の大きな特徴の一つである。
3.共用部分は「分割」できるのか?
民法には、共有物の分割についてのルールが定められている。
しかし、マンションの共用部分について、共有者が「自分の持分に応じて廊下や階段を物理的に分割して、自分だけの所有部分にする」といったことはできない。
そもそも共用部分は、区分所有者が共同で利用・管理することを前提とした部分である。
区分所有法は、共用部分について民法上の共有とは異なる特別なルールを設けており、共用部分の持分も専有部分から切り離して処分できないようにしている。
したがって、
「共用部分の持分が10%あるから、廊下の10%を自分の所有物として取り出せる」
という意味ではない。
ここは、「共有持分=物理的な場所の所有範囲」ではないという点を理解しておくことが重要である。
4.マンションの「土地」はどうなっている?
ここからは、建物だけでなく、マンションが建っている土地について考えてみよう。
マンションの区分所有者は、専有部分を所有するだけでは、その建物を利用することはできない。建物が建っている土地を利用するための権利も必要となる。
この権利を「敷地利用権」という。
敷地利用権は、土地の所有権である場合が多いが、それだけではない。
例えば、
- 土地の共有持分としての所有権
- 地上権
- 賃借権
など、土地を利用するためのさまざまな権利が敷地利用権となり得る。
5.専有部分と敷地利用権は原則として分離できない
区分所有法で非常に重要なのが、専有部分と敷地利用権の分離処分の禁止である。
区分所有法第22条第1項では、敷地利用権が複数人で有する所有権その他の権利である場合、区分所有者は、その専有部分と、それに対応する敷地利用権とを分離して処分することができないと定めている。
ただし、規約に別段の定めがある場合は例外となる。
したがって、一般的なマンションでは、
- 専有部分だけを売却して、敷地利用権を自分のものとして残す
- 敷地利用権だけを第三者に売却して、専有部分を自分のものとして残す
といったことは、原則としてできない。
専有部分と敷地利用権を一体として扱うことで、建物と土地の権利関係がバラバラになることを防いでいるのである。
(分離処分の禁止)
第二十二条 敷地利用権が数人で有する所有権その他の権利である場合には、区分所有者は、その有する専有部分とその専有部分に係る敷地利用権とを分離して処分することができない。ただし、規約に別段の定めがあるときは、この限りでない。
2 前項本文の場合において、区分所有者が数個の専有部分を所有するときは、各専有部分に係る敷地利用権の割合は、第十四条第一項から第三項までに定める割合による。ただし、規約でこの割合と異なる割合が定められているときは、その割合による。
3 前二項の規定は、建物の専有部分の全部を所有する者の敷地利用権が単独で有する所有権その他の権利である場合に準用する。
(区分所有法・e-GOV法令検索)
「部屋+土地の権利」がセット
イメージとしては、
専有部分(部屋)
+
敷地利用権(土地を利用するための権利)
↓
原則として一体として処分
と考えると分かりやすい。
なお、敷地利用権の割合についても、区分所有法第22条第2項に一定のルールが設けられており、原則として区分所有法第14条の規定による割合が基準となる。ただし、こちらも規約によって異なる割合を定めることができる。
6.「敷地利用権」と「敷地権」は同じではない
ここは不動産登記を理解するうえで重要なポイントである。
「敷地利用権」と「敷地権」は同じ意味ではない。
敷地利用権は、区分所有者がマンションの敷地を利用するための権利をいう。
これに対して、敷地権は不動産登記法上の用語である。
不動産登記法では、区分建物について、登記された敷地利用権のうち、区分所有法第22条第1項本文などによって専有部分と分離して処分できないものを「敷地権」として扱っている。
つまり、
敷地利用権
↓
一定の要件を満たし、登記上「敷地権」として扱われるものがある
という関係である。
この2つの用語を区別して覚えておくと、不動産登記の仕組みが理解しやすくなる。
7.「敷地権付き区分建物」とは?
マンションの登記を見ると、「敷地権付き区分建物」という言葉が出てくることがある。
敷地権が設定された区分建物では、建物の登記記録に、敷地権の種類や割合などが記録される。
また、敷地権の目的となった土地の登記記録には、「敷地権である旨」の登記がされる。
この仕組みにより、区分建物とその敷地に関する権利関係を登記上も一体的に公示することができる。
例えば、敷地権付き区分建物について所有権を移転する場合、原則として建物だけ、または土地の敷地権だけを切り離して登記することはできない。
「土地の登記簿がなくなる」わけではない
ここは誤解しやすいところである。
土地と建物は、それぞれ不動産として登記記録が存在する。
「敷地権の登記」とは、土地の登記記録をなくして建物の登記簿に統合するという意味ではない。
建物の登記記録に敷地権に関する事項が記録され、土地側にも敷地権である旨の登記がされることで、建物と土地の権利関係が連動する仕組みになっている。
8.まとめ
今回は、マンションの共用部分と敷地について、その権利関係を整理した。
共用部分の持分
共用部分の持分は、原則として専有部分の床面積の割合によって決まる。
また、区分所有法上の床面積は、原則として壁などの内側線で囲まれた部分の水平投影面積(内法)によって計算される。
共用部分の持分と専有部分
共用部分の持分は、専有部分と切り離して自由に処分することはできない。
「専有部分の処分に従う」という関係にある。
敷地利用権
マンションの区分所有者には、専有部分だけでなく、その専有部分に対応する敷地利用権が関係する。そして、原則として専有部分と敷地利用権を分離して処分することはできない。
敷地権
「敷地権」は、敷地利用権のうち、不動産登記法上、専有部分と分離して処分できないものについて用いられる登記上の概念である。
マンションを購入するということは、単に「部屋を所有する」ということではない。
専有部分(部屋)
+
共用部分の持分
+
敷地利用権
という複数の権利関係が結び付いている。
この「一体性」を理解することが、建物区分所有を学ぶうえで重要なポイントとなる。
次回は、いよいよ建物区分所有の「管理」に進む。
【建物区分所有③】では、「全員の合意はどう取る?集会決議と修繕・建替え」をテーマに、区分所有者の意思決定の仕組みや、共用部分の管理・変更、さらに建替えなどの重要なルールについて解説する。


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