民法を学ぼう!「所有権(24)」【建物区分所有③】合意はどう取る?「集会」と「決議」を学ぼう【2026年改正対応】

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司法・法務

【建物区分所有①】では、区分所有建物における「専有部分」と「共用部分」の違いについて整理した。

【建物区分所有②】では、共用部分の共有持分や、マンションの土地を利用するための「敷地利用権」、そして専有部分と敷地利用権を原則として分離して処分できない仕組みについて解説した。

では、マンションの共用部分を修繕したり、大規模な改修を行ったりする場合、誰がどのように決めるのだろうか。

マンションには多数の区分所有者がいるため、全員が毎回一致して決めることは現実的ではない。

そこで、区分所有法では、「集会」と「決議」によって、区分所有者全体の意思を決定する仕組みが設けられている。
なお、本稿では、「建物の区分所有等に関する法律」を「区分所有法」という。

さて、2026年(令和8年)4月1日に、老朽化したマンションの管理・再生を円滑にすることなどを目的として、改正された区分所有法が施行された。これにより、集会・決議の仕組みや建替えなどの再生制度が大きく見直されている。

今回は、マンションの意思決定の基本から、共用部分の修繕・変更、そして建替えまでを整理する。


1.意思決定は「集会」で「決議」として行う

区分所有者が複数いるマンションでは、共用部分の管理や規約の変更などについて、区分所有者全員の意思を確認する必要がある。

そのため、区分所有法では、区分所有者による「集会」が重要な役割を担っている。

集会では、議案について区分所有者が議決権を行使し、その結果を「決議」として確定させる。

イメージとしては、

区分所有者

集会

議案について議決

決議

マンションの管理・運営

という流れである。

ただし、すべての事項について同じ数の賛成が必要になるわけではない。
事項の重要性に応じて、必要となる決議要件が異なる。


2.「普通決議」と「特別決議」

マンションの集会では、事項の内容によって必要となる決議要件が異なる。

ここで重要なのが、一般に「普通決議」と呼ばれる決議と、より厳しい要件が必要となる「特別決議」である。

普通決議

通常の管理に関する事項については、基本的に普通決議によって決定する。

そして、2026年4月1日施行の改正区分所有法では、建替え決議などの区分所有権の処分を伴う決議を除き、原則として、集会に出席した区分所有者および議決権の多数決によって決議する仕組みへと改められた。

ここでいう「出席」には、実際に集会へ出席する場合だけでなく、議決権行使書や委任状によって議決権を行使する場合も含まれる。

つまり、改正後は、

「区分所有者全体の人数を分母として、過半数を集めなければならない」

という考え方ではなく、原則として出席した区分所有者を基礎として多数決を行う仕組みになった。

これは、マンションの高経年化などによって、所有者が不在であったり、意思決定に参加しなかったりするケースが増えていることを踏まえ、管理を円滑にするための重要な改正である。

(議事)
第三十九条 集会の議事は、この法律又は規約に別段の定めがない限り、出席した区分所有者(議決権を有しないものを除く。)及びその議決権の各過半数で決する。
2 議決権は、書面又は代理人によつても行使することができる。この場合において、書面又は代理人によつて議決権を行使した区分所有者の数は出席した区分所有者の数に、当該議決権の数は出席した区分所有者の議決権の数に、それぞれ算入する。
(略)
(区分所有法・e-GOV法令検索)

3.重要な事項には「特別決議」が必要

マンションの管理に関するすべての事項を、普通決議だけで決められるわけではない。

例えば、共用部分に大きな変更を加える場合や、管理規約を変更する場合など、区分所有者に大きな影響を与える事項については、より厳しい決議要件が設けられている。

代表的なものとして、

  • 共用部分の変更
  • 規約の設定・変更・廃止
  • 建替え

などがある。

ただし、これらはそれぞれ要件が異なるため、「重要な事項は全部○分の○」と一括して覚えるのはやめよう。

試験対策としては、事項ごとに決議要件を整理して覚えることである。

(共用部分の変更)
第十七条 共用部分の変更(その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く。第五項において同じ。)は、集会において、区分所有者(議決権を有しないものを除く。以下この項及び第三項において同じ。)の過半数(これを上回る割合を規約で定めた場合にあつては、その割合以上)の者であつて議決権の過半数(これを上回る割合を規約で定めた場合にあつては、その割合以上)を有するものが出席し出席した区分所有者及びその議決権の各四分の三(これを下回る割合(二分の一を超える割合に限る。)を規約で定めた場合にあつては、その割合)以上の多数による決議で決する。
2 前項の場合において、共用部分の変更が専有部分の使用に特別の影響を及ぼすべきときは、その専有部分の所有者の承諾を得なければならない。
3 第一項の決議により共用部分の変更をする場合において、規約に特別の定めがあるときは、当該共用部分の変更に伴い必要となる専有部分の保存行為又は専有部分の性質を変えない範囲内においてその利用若しくは改良を目的とする行為(次項及び次条第四項において「専有部分の保存行為等」という。)は、集会において、区分所有者の過半数(これを上回る割合を規約で定めた場合にあつては、その割合以上)の者であつて議決権の過半数(これを上回る割合を規約で定めた場合にあつては、その割合以上)を有するものが出席し、出席した区分所有者及びその議決権の各四分の三(これを下回る割合(二分の一を超える割合に限る。)を規約で定めた場合にあつては、その割合)以上の多数による決議で決することができる。
(略)
(区分所有法・e-GOV法令検索)
(規約の設定、変更及び廃止)
第三十一条 規約の設定、変更又は廃止は、集会において、区分所有者(議決権を有しないものを除く。以下この項前段において同じ。)の過半数(これを上回る割合を規約で定めた場合にあつては、その割合以上)の者であつて議決権の過半数(これを上回る割合を規約で定めた場合にあつては、その割合以上)を有するものが出席し、出席した区分所有者及びその議決権の各四分の三以上の多数による決議によつてする。この場合において、規約の設定、変更又は廃止が一部の区分所有者の権利に特別の影響を及ぼすべきときは、その承諾を得なければならない。
(略)
(区分所有法・e-GOV法令検索)

4.共用部分の「修繕」と「変更」はどう違う?

マンションでは、長年住み続けていると、外壁の補修、防水工事、給排水設備の更新など、共用部分の修繕が必要になる。

ここで重要なのが、

「共用部分の修繕」と「共用部分の変更」は同じではない

ということである。

修繕

修繕とは、建物が本来持っている効用を維持したり、回復したりするための工事である。

例えば、

  • 壊れた設備を修理する
  • 外壁を補修する
  • 屋上の防水をやり直す
  • 劣化した配管を交換する

などが考えられる。

一方、単なる修繕の範囲を超えて、共用部分の形状や効用を大きく変える場合には、「変更」として扱われる可能性がある。

例えば、共用部分を大きく改造して新たな設備を設置するようなケースである。

そのため、工事の内容と区分所有法上の性質を確認する必要がある。


5.共用部分の変更には決議が必要

前述したとおり、区分所有法では、共用部分の変更について特別のルールを設けている。

共用部分の形状または効用の著しい変更を伴う場合には、原則として、集会における一定の特別多数決による決議が必要となる。

一方、形状または効用の著しい変更を伴わない変更については、より緩やかなルールが適用される。

つまり、

単なる保存・修繕

比較的軽い管理行為

共用部分の変更(形状または効用の著しい変更を伴う場合)

重大な変更

というように、内容によって必要となる決議が異なる。

この区別は、マンション管理士や管理業務主任者の試験でも重要なポイントである。


6.「建替え」はさらに重要な決議

マンションが老朽化すると、

「修繕を続けるのか?」「大規模な改修をするのか?」「それとも建物を取り壊して建て替えるのか?」

という問題が生じる。

建替えは、単なる修繕や共用部分の変更とは異なり、現在の建物を取り壊して、新たな建物を建築する重大な決定である。

そのため、区分所有法では、通常よりも厳しい決議要件が設けられている。


7.改正後の「建替え決議」

一定の場合には4分の3へ緩和

建替え決議について、原則として、

区分所有者および議決権の各5分の4以上

の賛成が必要とされる一方、一定の要件に該当する場合、建替え決議の要件が、

各5分の4以上 → 各4分の3以上

に緩和される制度が設けられた。

例えば、

  • 地震に対する安全性に関する基準に適合していない場合
  • 火災に対する安全性に関する基準に適合していない場合

などが対象となる。

老朽化したマンションの再生を円滑に進めるため、建物の状態に応じて決議要件を緩和する仕組みが導入されたのである。

(建替え決議)
第六十二条 集会においては、区分所有者(議決権を有しないものを除く。)及び議決権の各五分の四以上の多数で、建物を取り壊し、かつ、当該建物の敷地若しくはその一部の土地又は当該建物の敷地の全部若しくは一部を含む土地に新たに建物を建築する旨の決議(以下「建替え決議」という。)をすることができる。
2 建物が次の各号のいずれかに該当する場合における前項の規定の適用については、同項中「五分の四」とあるのは、「四分の三」とする。
一 地震に対する安全性に係る建築基準法(昭和二十五年法律第二百一号)又はこれに基づく命令若しくは条例の規定に準ずるものとして法務大臣が定める基準に適合していないとき。
二 火災に対する安全性に係る建築基準法又はこれに基づく命令若しくは条例の規定に準ずるものとして法務大臣が定める基準に適合していないとき。
(略)
(区分所有法・e-GOV法令検索)

8.建替えだけではない「マンション再生」

2026年の改正区分所有法(および改正マンション再生円滑化法)では、マンションの再生方法についても制度が拡充された。

従来の建替えだけでなく、

  • 建物更新決議
  • 再建決議
  • 建物敷地売却決議
  • 建物取壊し敷地売却決議
  • 敷地売却決議
  • 取壊し決議

などの制度が設けられている。

これは、マンションの状況に応じて、「修繕して使い続ける」だけではなく、

「建物を更新する」
「建て替える」
「売却する」
「取り壊す」

など、複数の再生方法を選択できるようにするための整備である。

マンションの老朽化が進む中で、「建替えか修繕か」という二択だけでは対応できないケースが増えていることが、今回の法改正の背景にある。


9.改正で「集会」に関するルールも変わった

今回の改正では、マンションの意思決定を円滑にするため、集会に関するルールも見直された。

例えば、原則として、集会の招集通知では、会議の目的となる事項だけでなく、議案の要領も示す必要がある。

(招集の通知)
第三十五条 集会の招集の通知は、会日より少なくとも一週間前に、会議の目的たる事項及び議案の要領を示して、各区分所有者(議決権を有しないものを除く。)に発しなければならない。ただし、この期間は、規約で伸長することができる。
(略)
(区分所有法・e-GOV法令検索)

さらに、所在等が不明な区分所有者について、一定の要件のもとで決議の母数から除外する仕組みも設けられた。

(所在等不明区分所有者の除外)
第三十八条の二 裁判所は、区分所有者を知ることができず、又はその所在を知ることができないときは、当該区分所有者(次項において「所在等不明区分所有者」という。)以外の区分所有者(以下この項及び第三項において「一般区分所有者」という。)又は管理者の請求により、一般区分所有者による集会の決議をすることができる旨の裁判をすることができる
2 前項の裁判により所在等不明区分所有者であるとされた者は、前条の規定にかかわらず、集会における議決権(当該裁判に係る建物が滅失したときは、当該建物に係る敷地利用権を有する者又は当該建物の附属施設(これに関する権利を含む。)の共有持分を有する者が開く集会における議決権)を有しない。
(略)
(区分所有法・e-GOV法令検索)

これらは、マンションの高経年化や所有者の所在不明化などによって、意思決定が進まなくなる問題に対応するための改正である。


10.「全員一致」ではなく「法で定められた決議」で決める

ここまで見てきたように、マンションの管理では、すべての区分所有者が同じ意見になる必要はない。

重要なのは、「区分所有法で定められた手続に従って、必要な多数の賛成を得ること」である。

内容考え方
通常の管理原則として出席者の多数決
共用部分の変更内容に応じた決議が必要
規約の変更特別な決議要件
建替え原則として区分所有者・議決権の各5分の4以上
一定の安全性上の問題がある建物の建替え各4分の3以上に緩和される場合がある

※実際の決議要件は、対象となる行為や区分所有法の規定によって異なるため、個別に確認する必要がある。


11.まとめ

今回は、マンションの管理における「集会」と「決議」について解説した。

集会

区分所有者による意思決定の場であり、議案について決議を行う。

普通の管理

2026年4月1日施行の改正区分所有法では、建替え決議などを除き、原則として出席者の多数決によって決議する仕組みとなった。

共用部分の変更

修繕なのか変更なのか、さらに変更の程度によって、必要となる決議が異なる。

建替え

原則として、区分所有者および議決権の各5分の4以上の賛成が必要となる。

また、一定の客観的な緩和事由がある場合には、各4分の3以上に緩和される。

その他の改正

建替えだけでなく、建物更新、再建、敷地売却など、マンションの再生を円滑にするための新しい制度が設けられた。


マンションは、多くの人が一つの建物を共同で利用する特殊な所有形態である。

そのため、

「自分の部屋だから何でも自由にできる」

わけでもなければ、

「全員の意見が一致しなければ何も決められない」

わけでもない。

区分所有法は、専有部分についての個人の権利を保障しながら、共用部分については区分所有者が共同で管理し、必要な事項を多数決によって決定できる仕組みを設けている。

2026年の改正では、こうしたマンション管理の意思決定をより円滑にするとともに、建替えだけではない多様な再生手段を整備する方向へと制度が大きく変わっている。

「所有」だけでなく、「共同で管理する」という視点を持つことが、建物区分所有を理解するうえで重要なのである。

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