I 人体の構造と働き(12)
4 脳や神経系の働き
体内の情報伝達の大半を担う組織として、神経細胞が連なった神経系がある。神経細胞の細胞体から伸びる細長い突起(軸索)を神経線維という。
身体の個々の組織は刺激によって反射的に動くことが出来るが、実際の人間の身体は個々の部位が単独で動いているものではなく総合的に制御されており、このような制御する部分を中枢といい、一方、中枢によって制御される部分を末梢と呼ぶ。
中枢は末梢からの刺激を受け取って統合し、それらに反応して興奮を起こし、末梢へ刺激を送り出すことで、末梢での動きを発生させ、人間の身体を制御している。
したがって、神経系もその働きにより、中枢神経系と末梢神経系とに大別される。
1)中枢神経系
中枢神経系は脳と脊髄から構成される。
脳は、頭の上部から下後方部にあり、知覚、運動、記憶、情動、意思決定等の働きを行っている。脳の下部には、自律神経系、ホルモン分泌等の様々な調節機能を担っている部位(視床下部など)がある。
脳における細胞同士の複雑かつ活発な働きのため、脳において、血液の循環量は心拍出量の約 15%、酸素の消費量は全身の約20%、ブドウ糖の消費量は全身の約25%と多い。
脳内には多くの血管が通っているが、脳の血管は末梢に比べて物質の透過に関する選択性が高く、タンパク質などの大分子や小分子でもイオン化した物質は血液中から脳の組織へ移行しにくい。このように、脳の毛細血管が中枢神経の間質液環境を血液内の組成変動から保護するように働く機能を血液脳関門という。
小児では、血液脳関門が未発達であるため、循環血液中に移行した医薬品の成分が脳の組織に達しやすい。
脳は脊髄と、延髄(後頭部と頸部の境目あたりに位置する)でつながっている。延髄には、心拍数を調節する心臓中枢、呼吸を調節する呼吸中枢等がある。延髄は多くの生体の機能を制御する部位であるが、複雑な機能の場合はさらに上位の脳の働きによって制御されている。
脊髄は脊椎の中にあり、脳と末梢の間で刺激を伝えるほか、末梢からの刺激の一部に対して脳を介さずに刺激を返す場合があり、これを脊髄反射と呼ぶ。
ポイント
・延髄には、心拍数を調節する心臓中枢、呼吸を調節する呼吸中枢等がある。
・脳の血管は末梢に比べて物質の透過に関する選択性が高い
・小児では、血液脳関門が未発達であるため、循環血液中に移行した医薬品の成分が脳の組織に達しやすい。
(参考)
・登録販売者試験問題作成に関する手引き(令和7年4月)
・ズルい!合格法シリーズ ズルい!合格法 医薬品登録販売者試験対策 鷹の爪団直伝!参考書 Z超 株式会社医学アカデミーYTL(著)薬ゼミ情報教育センター
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