民法を学ぼう(条件・期限)

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司法・法務

前回に続いて民法のトピックスを取り上げていこう。今回は、「条件・期限」である。

一般的に、「条件」と「期限」の使い分けはあいまいになってはいないだろうか。もちろん、民法では両者を明確に区別している。例を挙げてみよう。

AがBに「Bが大学入試に合格したら10万円あげよう」と申し出て、Bがこの申し出を承諾すると贈与契約が成立する。しかしこの契約の効力は、意思表示と同時には生じない。Bが大学入試に合格してはじめて生じる。ところが、Bが合格するのかどうかは誰にもわからない。このように法律行為の効力を将来発生するか否かが不確実な事実の成否にかからせる特約を「条件」という。

一方、「2030年4月1日に借りていた物品を返す」という契約はどうだろう。2030年4月1日は必ず来る。いつ来るのかもカレンダーをみればわかる。このように法律効果の発生を将来の到来が確実な事実の発生にかからせる場合を期限という。なお、このように到来する時期が決まっているものを「確定期限」、「次に雨が降ったら」のようにいつ到来するか不確実なものを「不確定期限」という。

では、条件について少し詳しくみていこう。条件には、停止条件解除条件がある。

停止条件と解除条件

まずは、条件成就によって法律行為の効力が発生する場合を停止条件という。(127条1項)先ほどの「大学入試に合格したら」という条件は停止条件である。

逆に、条件成就によって法律行為の効力行為の効力が消滅する場合を、解除条件という。例えば、「大学入試に合格出来なかったら借りていたものを返す」という場合の「大学入試に合格出来なかったら」という条件は解除条件である。(127条2項)

(条件が成就した場合の効果)

第百二十七条 停止条件付法律行為は、停止条件が成就した時からその効力を生ずる。

 解除条件付法律行為は、解除条件が成就した時からその効力を失う。

以下略

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条件成就の擬制

条件の成就によって、不利益を受ける当事者が故意にその条件の成就を妨げた場合、相手方はその条件が成就したものとみなすことができる。(130条1項)例えば、Bが不動産業者Aに不動産の売却のあっせんを依頼して、成約の場合に報酬金の支払いを約束していたとしよう。Aから購入希望者Cを紹介された後にAに支払うお金を惜しんで、Cと直接契約してしまった。この場合には、Aは条件が成立したものとみなしてBに報酬金を請求できる。

条件不成就の擬制

XがYと特許を巡るトラブルになったとする。Yが特許を持っているものをXが勝手に作っていたのだ。そこで、Xが次に作ったらYに1,000万円払うことで示談になった。ところが、Yが自己の従業員を客としてXに向かわせ、Xに無理やりYが特許を持っているものを作らせた。この場合は、Yは「条件は成就しなかったとみなす」ことができる。(130条2項)

(条件の成就の妨害等)

第百三十条 条件が成就することによって不利益を受ける当事者が故意にその条件の成就を妨げたときは、相手方は、その条件が成就したものとみなすことができる。

 条件が成就することによって利益を受ける当事者が不正にその条件を成就させたときは、相手方は、その条件が成就しなかったものとみなすことができる。

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民法ではほかにも一定の種類の事実を条件の内容とした場合の取り扱いについて規定している。(131条から134条を参照)

次に、期限についてみていこう。

期限について、よく出てくる判例がある。「出世払い」特約にかかるものである。貸主Aが借主Bに「返済はあなたが出世したときでいい」として金品を貸したとする。一般的にはこの出世払い特約は、贈与契約である。ただし、この判例の事案はお互いに借金契約の意思があったのである。これを「条件」とすると「出世したら返す、出世しなかったら返さなくてよい」となってしまい、借金ではなく贈与になってしまう。そこで、判例は、お互いの意思が借金である場合は、このオプションは期限と考えたのである。期限ならば返済は必ず起きる。

期限の利益

期限に関して重要なことは、期限の利益の問題である。例えば、AがBに弁済期1年後という約束で、100万円を貸した場合、Bは期限の到来まで100万円を使えるという利益を有する。このように期限の到来するまで当事者が受ける利益を「期限の利益」という。期限の利益があってよかったのはBだけである。Aは期限まで請求できないという不利益を負っている。そのため、Bがこの利益を放棄することは自由である。これを「期限の利益の放棄」という。Bが「弁済期前に払います」ということ。

(期限の利益及びその放棄)

第百三十六条 期限は、債務者の利益のために定めたものと推定する。

 期限の利益は、放棄することができる。ただし、これによって相手方の利益を害することはできない。

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期限の利益の喪失

ところが、債務者に信用を失わせるような事情や行為があると、債務者は期限の利益を主張できなくなる。期限の利益の喪失である。債務者は直ちに債務を履行しなければならない。以下の137条の1号から3号までが、債務者が信用できないという状況である。

(期限の利益の喪失)

第百三十七条 次に掲げる場合には、債務者は、期限の利益を主張することができない。

 債務者が破産手続開始の決定を受けたとき。

 債務者が担保を滅失させ、損傷させ、又は減少させたとき。

 債務者が担保を供する義務を負う場合において、これを供しないとき。

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参考文献)民法総則「第2版」 原田 昌和 他著 (日本評論社)、司法書士 合格ゾーンテキスト 1 民法I 「第3版」根本正次著 (東京リーガルマインド)

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