I 人体の構造と働き(2)
1 胃・腸、肝臓、肺、心臓、腎臓などの内臓器官
1)消化器系

膵臓(すいぞう)
胃の後下部に位置する細長い臓器で、膵液を十二指腸へ分泌する。
膵液は弱アルカリ性で、胃で酸性となった内容物を中和するのに重要である。
膵液は、消化酵素の前駆体タンパクであり消化管内で活性体であるトリプシンに変換されるトリプシノーゲンのほか、デンプンを分解するアミラーゼ(膵液アミラーゼ)、脂質を分解するリパーゼなど、多くの消化酵素を含んでいる。
すなわち、膵臓は、炭水化物、タンパク質、脂質のそれぞれを消化するすべての酵素の供給を担っている。
胆嚢(たんのう)、肝臓
胆嚢は、肝臓で産生された胆汁を濃縮して蓄える器官で、十二指腸に内容物が入ってくると収縮して腸管内に胆汁を送り込む。
胆汁に含まれる胆汁酸塩(コール酸、デオキシコール酸等の塩類)は、脂質の消化を容易にし、また、脂溶性ビタミンの吸収を助ける。腸内に放出された胆汁酸塩の大部分は、小腸で再吸収されて肝臓に戻される(腸肝循環)。
胆汁には、古くなった赤血球や過剰のコレステロール等を排出する役割もある。胆汁に含まれるビリルビン(胆汁色素)は、赤血球中のヘモグロビンが分解されて生じた老廃物で、腸管内に排出されたビリルビンは、腸管内に生息する常在細菌(腸内細菌)によって代謝されて、糞便を茶褐色にする色素となる。
肝臓は、大きい臓器であり、横隔膜の直下に位置する。胆汁を産生するほかに、主な働きとして次のようなものがある。
栄養分の代謝・貯蔵
小腸で吸収されたブドウ糖は、血液によって肝臓に運ばれてグリコーゲンとして蓄えられる。
グリコーゲンは、ブドウ糖が重合してできた高分子多糖で、血糖値が下がったときなど、必要に応じてブドウ糖に分解されて血液中に放出される。
皮下組織等に蓄えられた脂質も、一度肝臓に運ばれてからエネルギー源として利用可能な形に代謝される。
また、肝臓は、脂溶性ビタミンであるビタミンA、D等のほか、ビタミンB6やB12等の水溶性ビタミンの貯蔵臓器でもある。
生体に有害な物質の無毒化・代謝
消化管等から吸収された、又は体内で生成した、滞留すると生体に有害な物質を、肝細胞内の酵素系の働きで代謝して無毒化し、又は体外に排出されやすい形にする。
医薬品として摂取された物質の多くも、肝臓において代謝される。
アルコールの場合、胃や小腸で吸収されるが、肝臓へと運ばれて一度アセトアルデヒドに代謝されたのち、さらに代謝されて酢酸となる。
アミノ酸が分解された場合等に生成するアンモニアも、体内に滞留すると有害な物質であり、肝臓において尿素へと代謝される。ヘモグロビンが分解して生じたビリルビンも肝臓で代謝されるが、肝機能障害や胆管閉塞などを起こすとビリルビンが循環血液中に滞留して、黄疸(皮膚や白目が黄色くなる症状)を生じる。
生体物質の産生
生体物質とは生物の体内に存在する化学物質の総称であり、胆汁酸やホルモンなどの生合成の出発物質となるコレステロール、フィブリノゲン等の血液凝固因子、アルブミン等、生命維持に必須な役割を果たす種々の生体物質は、肝臓において産生される。また、肝臓では、必須アミノ酸以外のアミノ酸を生合成することができる。
大腸
盲腸、虫垂、上行結腸、横行結腸、下行結腸、S状結腸、直腸からなる管状の臓器で、内壁粘膜に絨毛がない点で小腸と区別される。
腸の内容物は、大腸に入ってきたときはかゆ状であるが、大腸の運動によって腸管内を通過するに従って水分とナトリウム、カリウム、リン酸等の電解質の吸収が行われ、固形状の糞便が形成される。大腸では消化はほとんど行われない。大腸の粘膜から分泌される粘液(大腸液)は、便塊を粘膜上皮と分離しやすく滑らかにする。
大腸内には腸内細菌が多く存在し、腸管内の食物繊維(難消化性多糖類)を発酵分解する。大腸の粘膜上皮細胞は、腸内細菌が食物繊維を分解して生じる栄養分を、その活動に利用しており、大腸が正常に働くには、腸内細菌の存在が重要である。
また、大腸の腸内細菌は、血液凝固や骨へのカルシウム定着に必要なビタミンK等の物質も産生している。なお、腸内細菌による発酵で、糞便の臭気の元となる物質やメタン、二酸化炭素等のガスが生成される。
通常、糞便の成分の大半は水分で、そのほか、はがれ落ちた腸壁上皮細胞の残骸(15~20%)や腸内細菌の死骸(10~15%)が含まれ、食物の残滓は約5%に過ぎない。糞便となって直腸に達すると、刺激が脳に伝わって便意を生じる。
直腸は、大腸の終末の部分で、肛門へと続いている。通常、糞便は下行結腸、S状結腸に滞留し、直腸は空になっている。S状結腸に溜まった糞便が直腸へ送られてくると、その刺激に反応して便意が起こる。
肛門
直腸粘膜が皮膚へと連なる体外への開口部である。直腸粘膜と皮膚の境目になる部分には歯状線と呼ばれるギザギザの線がある。
肛門周囲は肛門括約筋で囲まれており、排便を意識的に調節することができる。
また、静脈が細かい網目状に通っていて、肛門周囲の組織がうっ血すると痔の原因となる。
(参考)
・登録販売者試験問題作成に関する手引き(令和7年4月)
・ズルい!合格法シリーズ ズルい!合格法 医薬品登録販売者試験対策 鷹の爪団直伝!参考書 Z超 株式会社医学アカデミーYTL(著)薬ゼミ情報教育センター
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