民法を学ぼう!「所有権(3)」

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司法・法務

土地所有権の内容と制限

土地は他の物と比べると有限であり、また、生活・営業の基盤となるため重要である。そして、以下のような特殊性を有する。

第1に、土地の範囲は外形的に明確ではない。本などの動産は、見たり手に持ったりすれば、1つの物を容易に認識できることが多い。他方、土地の場合、どこからどこまでが1つの土地か容易に認識できない。たしかに、塀などの囲い・杭などがあれば、1つの土地として認識できるようにも思える。しかし、土地の一部かもしれないし、複数の土地から成り立っているかもしれない。法律上は、登記によって1つ (一筆)の土地が定められる。

第2に、土地は隣地と接しているので、必然的に隣地との関係(相隣関係)が問題となる。たとえば、隣地を通らないと公道に出られない場合、どうすべきかを考える必要がある。

土地所有権の及ぶ範囲

土地所有権は上下のどこにまで及ぶのか。民法上、土地所有権は、土地の上下に及ぶとされる(207条)。これを素直に読めば、土地の上下について無制限に所有権の効力が及ぶようにも思える。しかし、このように解すると、飛行機などが空を飛ぶことができなくなる。そこで、土地所有権が及ぶのは、土地利用によって利益を得られる範囲に限られると解されている。具体的に、地上何メートル、地下何メートルにまで及ぶ、と明確にすることはできず、土地ごとに個別に判断するしかない。

(土地所有権の範囲)
第207条 土地の所有権は、法令の制限内において、その土地の上下に及ぶ。
(民法・e-GOV法令検索)

地上

地上は空間なので、土地を構成しているわけではない。しかし、土地所有権の効力は及ぶ。 飛行機・ヘリコプターなどが、自分の土地の上を飛ぶことを防げるか。基本的には、よほどの低空でない限り防げない場合が多いであろう。法律上、人・家屋が密集している地域では、半径600m以内のもっとも高い障害物から、300m以上の高度をとらなければならない (航空81条、同施行規則174 条)。これは、あくまで航空安全上の観点から定められているが、建物の高さから300m 以上については、所有権の効力が及ばないことを前提にしているとも考えられる。

(最低安全高度)
第81条 航空機は、離陸又は着陸を行う場合を除いて、地上又は水上の人又は物件の安全及び航空機の安全を考慮して国土交通省令で定める高度以下の高度で飛行してはならない。但し、国土交通大臣の許可を受けた場合は、この限りでない。
(航空法・e-GOV法令検索)
(最低安全高度)
第174条 法第八十一条の規定による航空機の最低安全高度は、次のとおりとする。
一 有視界飛行方式により飛行する航空機にあつては、飛行中動力装置のみが停止した場合に地上又は水上の人又は物件に危険を及ぼすことなく着陸できる高度及び次の高度のうちいずれか高いもの
イ 人又は家屋の密集している地域の上空にあつては、当該航空機を中心として水平距離六百メートルの範囲内の最も高い障害物の上端から三百メートルの高度
ロ 人又は家屋のない地域及び広い水面の上空にあつては、地上又は水上の人又は物件から百五十メートル以上の距離を保つて飛行することのできる高度
ハ イ及びロに規定する地域以外の地域の上空にあつては、地表面又は水面から百五十メートル以上の高度
二 計器飛行方式により飛行する航空機にあつては、告示で定める高度
(航空法施行規則・e-GOV法令検索)

地下

逆に地下はどうか。地中の石、地下水、温泉などは、土地の構成物であるので、当然に所有権の効力が及ぶ。地下鉄、上下水道管、 ガス管、電線、さらには道路など多くのものが地下を通っているが、この場合、区分地上権(269条の2)という利用権が設定されていることが多い。 該当部分について、土地所有者と利用権者の合意により、利用権が設定されている。

(地下又は空間を目的とする地上権)
第269条の2 地下又は空間は、工作物を所有するため、上下の範囲を定めて地上権の目的とすることができる。この場合においては、設定行為で、地上権の行使のためにその土地の使用に制限を加えることができる。
2 前項の地上権は、第三者がその土地の使用又は収益をする権利を有する場合においても、その権利又はこれを目的とする権利を有するすべての者の承諾があるときは、設定することができる。この場合において、土地の使用又は収益をする権利を有する者は、その地上権の行使を妨げることができない。
(民法・e-GOV法令検索)

大深度地下

しかし、地下鉄・地下道路などを建設する場合、土地所有者の合意を得られないことも多い。そこで、土地所有者の合意を不要とする「大深度地下の公共的使用に関する特別措置法」 が制定されている。リニア中央新幹線の建設でも、この法律が用いられる。

この法律は、東京などの大都市圏において、土地所有者などによる通常の利用が行われない深い地下部分 (大深度地下)について、公共の利益となる事業のために、一定の要件、手続のもとに、事業者の利用を認めるものである。大深度地下とは、たとえば、地下室建設のための利用が通常行われない深さである地下40m以深である(大深度地下2条参照)。

(定義)
第二条 この法律において「大深度地下」とは、次の各号に掲げる深さのうちいずれか深い方以上の深さの地下をいう。
一 建築物の地下室及びその建設の用に通常供されることがない地下の深さとして政令で定める深さ
二 当該地下の使用をしようとする地点において通常の建築物の基礎ぐいを支持することができる地盤として政令で定めるもののうち最も浅い部分の深さに政令で定める距離を加えた深さ
(大深度地下の公共的使用に関する特別措置法・e-GOV法令検索)

大深度地下においては、認可を受けた事業者には使用権が与えられ、その反面、土地所有者は権利行使を制限される (同25条)。しかし、所有権の効力が及ばないとまではいえない。土地所有権者は、損失を被った場合には、損失の補償を請求できる(同37条1項)。

(使用の認可の効果)
第25条 第二十一条第一項の規定による告示があったときは、当該告示の日において、認可事業者は、当該告示に係る使用の期間中事業区域を使用する権利を取得し、当該事業区域に係る土地に関するその他の権利は、認可事業者による事業区域の使用を妨げ、又は当該告示に係る施設若しくは工作物の耐力及び事業区域の位置からみて認可事業者による事業区域の使用に支障を及ぼす限度においてその行使を制限される。

(その他の損失の補償)
第37条 第三十二条第一項に規定する損失のほか、第二十五条の規定による権利の行使の制限によって具体的な損失が生じたときは、当該損失を受けた者は、第二十一条第一項の規定による告示の日から一年以内に限り、認可事業者に対し、その損失の補償を請求することができる。
(大深度地下の公共的使用に関する特別措置法・e-GOV法令検索)

鉱物の例外

地中の鉱物を採掘・取得する権利は、これを国に与えられた者にしか認められない(鉱業2条参照)。

(国の権能)
第2条 国は、まだ掘採されない鉱物について、これを掘採し、及び取得する権利を賦与する権能を有する。
(鉱業法・e-GOV法令検索)

(参考)物権法[第3版] NBS (日評ベーシック・シリーズ) 日本評論社


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