5 共有物の分割
共有関係は、多数の者の権利が複雑に絡み合い、共有物の利用や管理をめぐる対立が生じやすい。そのため民法は、共有関係を解消して単独所有(あるいは新たな共有)へと移行させる手続として共有物の分割を認めている。
令和3年民法改正(2023年(令和5年)4月1日施行)では、長期間放置された遺産共有状態における分割ルールの見直しなど、大きな法改正が行われた。
(1)分割請求権と不分割契約
① 分割請求の自由(256条1項本文)
各共有者は、いつでも共有物の分割を請求することができる。他の共有者の同意は不要であり、持分にかかわらず分割請求権を行使できる。
(共有物の分割請求)
第二百五十六条 各共有者は、いつでも共有物の分割を請求することができる。ただし、五年を超えない期間内は分割をしない旨の契約をすることを妨げない。
2 前項ただし書の契約は、更新することができる。ただし、その期間は、更新の時から五年を超えることができない。
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② 不分割契約(256条1項但書・2項)
共有者は、5年を超えない期間内であれば「共有物を分割しない」という契約(不分割の特約)を結ぶことができる。
また、不分割契約は更新することができるが、その更新後の期間も更新の時から5年を超えることができない。
(2)分割の方法(協議による分割と裁判による分割)
共有物の分割は、まず共有者全員による協議を行い、協議が調わない場合(または協議をすることができない場合)に裁判によって決することになる。
① 協議による分割
共有者全員で分割方法について協議する。協議による分割について民法に具体的な方法を定めた条文はないが、共有者間で合意が成立すれば、その合意に基づいて共有物を分割することができる。
② 裁判による分割(258条)
協議が調わないとき、または協議をすることができないときは、各共有者は裁判所に共有物の分割を請求することができる(258条1項)。
裁判による分割方法には、以下の順位・方法がある(258条2項・3項)。
- 現物分割
共有物を物理的に切り分けて各自の単独所有とする方法(土地を分筆して分けるなど)。 - 賠償分割(代償分割)
共有者のうち一人または数人に共有物を取得させ、その者に他の共有者へ持分の価格(対価)を支払わせる方法。 - ①・②による分割ができない場合等 → 競売
現物分割も賠償分割もできないとき、または現物分割によってその価格が著しく減損するおそれがあるときに、共有物を競売にかけて得られた売却代金を持分に応じて分ける方法。
(裁判による共有物の分割)
第二百五十八条 共有物の分割について共有者間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、その分割を裁判所に請求することができる。
2 裁判所は、次に掲げる方法により、共有物の分割を命ずることができる。
一 共有物の現物を分割する方法
二 共有者に債務を負担させて、他の共有者の持分の全部又は一部を取得させる方法
3 前項に規定する方法により共有物を分割することができないとき、又は分割によってその価格を著しく減少させるおそれがあるときは、裁判所は、その競売を命ずることができる。
4 裁判所は、共有物の分割の裁判において、当事者に対して、金銭の支払、物の引渡し、登記義務の履行その他の給付を命ずることができる。
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(3)遺産共有と普通共有が競合する場合の特則(258条の2)
相続によって成立した「遺産共有」と、第三者との「通常の共有」が同一の共有物について併存する場合には、共有物分割と遺産分割の関係が問題となる。
そこで令和3年改正により、258条の2が新設された。
- 相続開始のときから10年を経過している場合など一定の要件を満たす場合、裁判所は遺産分割手続を経ることなく、通常の共有物分割手続の中で一括して分割を命じることができるようになった。
第二百五十八条の二 共有物の全部又はその持分が相続財産に属する場合において、共同相続人間で当該共有物の全部又はその持分について遺産の分割をすべきときは、当該共有物又はその持分について前条の規定による分割をすることができない。
2 共有物の持分が相続財産に属する場合において、相続開始の時から十年を経過したときは、前項の規定にかかわらず、相続財産に属する共有物の持分について前条の規定による分割をすることができる。ただし、当該共有物の持分について遺産の分割の請求があった場合において、相続人が当該共有物の持分について同条の規定による分割をすることに異議の申出をしたときは、この限りでない。
3 相続人が前項ただし書の申出をする場合には、当該申出は、当該相続人が前条第一項の規定による請求を受けた裁判所から当該請求があった旨の通知を受けた日から二箇月以内に当該裁判所にしなければならない。
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(4)分割の効果(261条・262条)
① 担保責任(261条)
各共有者は、他の共有者が分割によって取得した物について、売主と同じく、その持分に応じて担保責任を負う。
② 証書に関する権利(262条)
分割が完了したとき、共有物に関する証書は、その物を取得した者が保管する。共有物の一部を分割した場合は、最大の分割部分を取得した者が原本を保管し、他の共有者はその使用を求めることができる。
(分割における共有者の担保責任)
第二百六十一条 各共有者は、他の共有者が分割によって取得した物について、売主と同じく、その持分に応じて担保の責任を負う。
(共有物に関する証書)
第二百六十二条 分割が完了したときは、各分割者は、その取得した物に関する証書を保存しなければならない。
2 共有者の全員又はそのうちの数人に分割した物に関する証書は、その物の最大の部分を取得した者が保存しなければならない。
3 前項の場合において、最大の部分を取得した者がないときは、分割者間の協議で証書の保存者を定める。協議が調わないときは、裁判所が、これを指定する。
4 証書の保存者は、他の分割者の請求に応じて、その証書を使用させなければならない。
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【まとめ】共有物分割の要点
| 項目 | 規定・内容 |
| 分割請求権 | いつでも単独で請求可能(原則自由) |
| 不分割契約 | 最長5年(更新も最長5年) |
| 協議分割 | 共有者全員の合意が必要 |
| 裁判分割の方法 | 現物分割・賠償分割 → ②これらによる分割ができない場合等は競売 |
| 遺産共有との競合(改正法) | 相続開始から10年経過等により共有物分割手続への一本化が可能(258条の2) |


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