民法を学ぼう!「地上権(3)」これも地上権?区分地上権と法定地上権をやさしく解説

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司法・法務

はじめに

第1回では、地上権の基本を学んだ。
第2回では、地上権と土地賃借権の違い、そして「借地権」という用語の意味を整理した。

今回は、地上権の中でも少し特殊なものを取り上げる。
テーマは、区分地上権と法定地上権である。

区分地上権は、土地の地下や上空を一定の範囲に区切って利用するための仕組みである。
一方、法定地上権は、法律の規定によって成立する地上権である。

どちらも「地上権」という名前が付いているが、成立する場面や目的は異なる。
今回は、それぞれの仕組みを具体例からやさしく整理していく。


なぜ区分地上権が必要なのか?

「土地を利用する」と聞くと、通常は地表を利用することをイメージするだろう。
しかし、土地の利用方法はそれだけではない。

例えば、

  • 地下にトンネルを設ける
  • 地下に構造物を設ける
  • 上空に構造物を設ける
  • 送電線などを設置する

といった利用方法が考えられる。

このような場合、土地全体を利用する必要はない。
例えば、地下にトンネルを設けるのであれば、地下の一定の範囲だけを利用できればよい。
同じように、土地の上空に構造物を設ける場合も、土地の上空すべてを利用する必要はない。

そこで、

土地の地下や空間について、必要な範囲だけを利用する

という仕組みが必要になる。

これが区分地上権である。


区分地上権とは?

区分地上権とは、簡単にいえば、

土地の地下または空間について、上下の範囲を定めて利用する地上権

である。(民法269条の2)

(地下又は空間を目的とする地上権)
第二百六十九条の二 地下又は空間は、工作物を所有するため、上下の範囲を定めて地上権の目的とすることができる。この場合においては、設定行為で、地上権の行使のためにその土地の使用に制限を加えることができる。
2 前項の地上権は、第三者がその土地の使用又は収益をする権利を有する場合においても、その権利又はこれを目的とする権利を有するすべての者の承諾があるときは、設定することができる。この場合において、土地の使用又は収益をする権利を有する者は、その地上権の行使を妨げることができない。
(民法・e-GOV法令検索)

通常の地上権では、土地を利用する権利を設定する。
これに対して区分地上権では、土地の地下または空間について、上下の範囲を定めて地上権を設定する。

例えば、次のようなイメージである。

        上空
────────────────
        利用しない
────────────────
        地表
────────────────
        利用しない
────────────────
        地下トンネル
════════════════
        ← 利用する範囲 →

土地全体を利用するのではなく、必要な部分だけを立体的に切り出して利用する。


区分地上権の具体例

例えば、Aさんが甲土地を所有しているとする。
甲土地の地下に、Bさんは工作物(トンネル)を設けたい。
しかし、Bさんが甲土地全体を利用する必要はない。
必要なのは、地下の一定の範囲だけである。
そこで、その地下部分について区分地上権を設定する。

そこで、

  • 甲土地 → Aさん所有
  • 地下の一定範囲を利用する権利 → Bさん
  • 地下に設けた工作物 → Bさん所有

という関係を作ることができる。


区分地上権は、地下だけを対象とするものではない。
民法269条の2では、「上下の範囲を定めて」と規定していることから、地下だけでなく、空間についても、一定の範囲を定めて地上権を設定できる。

例えば、土地の上空に構造物を設ける場合などである。

ここで注意したいのは、

「航空機を飛ばせる権利」

ではないことである。

区分地上権の対象となるのは、工作物を所有するために利用する、一定の範囲の空間である。


法定地上権とは?

次に、もう一つの特殊な地上権を見てみよう。

それが法定地上権である。

法定地上権とは、簡単にいえば、

法律(民法)の規定によって成立する地上権

である。

通常の地上権は、当事者間で地上権を設定する。

これに対して法定地上権は、民法が定める条件に当てはまる場合に、法律上、地上権が設定されたものとして扱われる。

では、なぜ法定地上権が必要なのだろうか。

具体的なケースから考えてみよう。


なぜ法定地上権が必要なのか?

例えば、Aさんが甲土地と、甲土地の上にある乙建物を所有しているとする。

この状態では、Aさんは自分の甲土地を利用して乙建物を所有しているともいえる。
ところが、甲土地と乙建物に対する抵当権が実行されて、甲土地と乙建物の所有者が別々になったとしよう。
例えば、競売によって甲土地をBさん、乙建物をCさんが取得したとする。

Cさんは乙建物を所有している。しかし、乙建物が建っている甲土地はBさんの所有である。
もしCさんが、甲土地を利用する権利を持っていなければ、乙建物を利用することができない。

せっかく競売によって乙建物を手に入れても、利用できなければ、その取得が無意味になってしまう。
しかも建物はまだ利用できる可能性が高い。
にもかかわらず、甲土地を利用できないために乙建物を取り壊すことになれば、利用できる建物という財産を無駄にしてしまう。

そこで、建物のために土地を利用できるようにする仕組みが必要になる。
これが法定地上権である。(民法388条)

(法定地上権)
第三百八十八条 土地及びその上に存する建物が同一の所有者に属する場合において、その土地又は建物につき抵当権が設定され、その実行により所有者を異にするに至ったときは、その建物について、地上権が設定されたものとみなす。この場合において、地代は、当事者の請求により、裁判所が定める。
(民法・e-GOV法令検索)

では、実際にどのような場合に法定地上権が成立するのだろうか。
民法388条をもとに、具体的な流れを見てみよう。

① 土地と建物を同じ人が所有

Aさん
│
├─ 甲土地
└─ 乙建物

甲土地と乙建物の所有者は、どちらもAさんである。

② 土地・建物のいずれか、または両方に抵当権を設定

Aさんが甲土地・乙建物の両方に抵当権を設定したとする。

③ 抵当権を実行して競売

その後、抵当権が実行されて競売が行われた。

④ 競売によって土地と建物の所有者が別々になる

競売の結果、甲土地をBさん、乙建物をCさんが取得したとする。
土地と建物の所有者が別々になったのである。

⑤ 法定地上権が成立

このような場合に、建物について法定地上権が成立する。

したがって、乙建物の所有者Cさんは、法定地上権に基づいて、乙建物のために甲土地を利用できる。


今回のまとめ

今回は、地上権に関係する二つの制度を学んだ。

区分地上権

区分地上権は、

土地の地下または空間について、上下の範囲を定めて利用するための地上権

である。土地全体を利用するのではなく、必要な地下や上空の範囲を利用できる点が特徴である。

法定地上権

法定地上権は、

法律(民法)の規定によって成立する地上権

である。

土地と建物の所有者が競売によって別々になった場合に、民法388条の条件に当てはまれば、建物について法定地上権が成立する。

る。


地上権シリーズのまとめ

ここまで3回にわたって、地上権について学んできた。

第1回 地上権の基本

地上権とは、

他人の土地において、工作物又は竹木を所有するため、その土地を使用する権利

である。

地上権は物権であり、土地の所有者と土地を利用する人を分けることができる。

第2回 地上権と土地賃借権

地上権と土地賃借権は、どちらも他人の土地を利用するために使われる。

しかし、

地上権=物権
土地賃借権=債権

という違いがある。

また、「借地権」という用語は、借地借家法では、建物の所有を目的とする地上権または土地賃借権を意味する。

第3回 区分地上権と法定地上権

今回は、地上権の特殊な形を学んだ。
区分地上権は、土地の地下や空間について、必要な範囲を定めて利用する仕組みである。
法定地上権は、法律の条件に当てはまる場合に、建物を利用できるようにするために成立する仕組みである。

地上権を学ぶときは、

「他人の土地を利用する権利」

という基本から出発し、物権としての性質、土地賃借権との違い、さらに区分地上権や法定地上権へと広げていくと理解しやすい。

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