所有権の取得原因
所有権は、どのような場合に取得できるのか。 所有権の取得原因は、 承継取得と原始取得に分けられる。現実の社会において、所有権の取得原因として重要なのは、承継取得(売買・相続など)であり、さらに、原始取得のうちの時効取得と即時取得である。また、239条以下に規定されている。6つの所有権の取得原因である、①無主物の帰属、②遺失物の拾得、③理蔵物の発見、④付合、⑤混和、⑥加工のうち、④⑥は、重要な意味を持っている。
以下では、これらのルールを確認していこう。なお、 家畜外動物の取得に関する195条は、無主物先占と遺失物拾得の中間的ルールである。
(動物の占有による権利の取得)
第百九十五条 家畜以外の動物で他人が飼育していたものを占有する者は、その占有の開始の時に善意であり、かつ、その動物が飼主の占有を離れた時から一箇月以内に飼主から回復の請求を受けなかったときは、その動物について行使する権利を取得する。
(民法・e-GOV法令検索)
無主物の帰属・家畜外動物の取得遺失物の拾得・埋蔵物の発見(1)
無主物の帰属(無主物先占)
所有者がいない物(無主物)について、所有権の発生ルールを明確にしておく必要がある。 民法は動産と不動産とで異なった取扱いをする。
まず、無主の動産については、 所有の意思をもって占有した者が、その所有権を取得できる(239条1項)。漁師が海で魚を捕まえる場合、ゴルフ場経営者がゴルファーの放置したロストボールを回収する場合などが挙げられる。これに対して、無主の不動産は、国庫に帰属する(同2項)。火山活動により新たに鳥が出現した場合、土地の所有権は国に帰属する。国以外は無主の不動産の所有権を取得しない。他方、不動産所有権を放棄して無主物にできるかは争いがある。相続等により土地を取得した相続人が一定の要件を満たして申請をした場合、法務大臣の行政処分によりその土地を国庫に帰属させることができる(相続土地国庫帰属法2条)。しかし、これは所有者から国への所有権の承継取得であり、放棄を認める制度ではない。
(無主物の帰属)
第二百三十九条 所有者のない動産は、所有の意思をもって占有することによって、その所有権を取得する。
2 所有者のない不動産は、国庫に帰属する。
(民法・e-GOV法令検索)
(承認申請)
第二条 土地の所有者(相続等によりその土地の所有権の全部又は一部を取得した者に限る。)は、法務大臣に対し、その土地の所有権を国庫に帰属させることについての承認を申請することができる。
2 土地が数人の共有に属する場合には、前項の規定による承認の申請(以下「承認申請」という。)は、共有者の全員が共同して行うときに限り、することができる。この場合においては、同項の規定にかかわらず、その有する共有持分の全部を相続等以外の原因により取得した共有者であっても、相続等により共有持分の全部又は一部を取得した共有者と共同して、承認申請をすることができる。
3 承認申請は、その土地が次の各号のいずれかに該当するものであるときは、することができない。
一 建物の存する土地
二 担保権又は使用及び収益を目的とする権利が設定されている土地
三 通路その他の他人による使用が予定される土地として政令で定めるものが含まれる土地
四 土壌汚染対策法(平成十四年法律第五十三号)第二条第一項に規定する特定有害物質(法務省令で定める基準を超えるものに限る。)により汚染されている土地
五 境界が明らかでない土地その他の所有権の存否、帰属又は範囲について争いがある土地
(相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律・e-GOV法令検索)
遺失物の拾得
Aが時計を拾い警察に届け出たが、所有者が現れなかったとき、Aは時計を取得できる可能性がある。遺失物は、遺失物法の定めに従い公告をした後3か以内にその所有者が判明しないときは、これを拾得した者がその所有権を取得するからである(240条)。遺失物とは、占有者の意思によらず、 その所持を離れた物で、盗品ではない物、つまり落とし物である。
(遺失物の拾得)
第二百四十条 遺失物は、遺失物法(平成十八年法律第七十三号)の定めるところに従い公告をした後三箇月以内にその所有者が判明しないときは、これを拾得した者がその所有権を取得する。
(民法・e-GOV法令検索)
なぜAは所有権を取得できるのか。これは、所有権取得への期待を持たせることによって、他人の財産保護(事務管理: 697条)を奨励するためといわれる。
(事務管理)
第六百九十七条 義務なく他人のために事務の管理を始めた者(以下この章において「管理者」という。)は、その事務の性質に従い、最も本人の利益に適合する方法によって、その事務の管理(以下「事務管理」という。)をしなければならない。
2 管理者は、本人の意思を知っているとき、又はこれを推知することができるときは、その意思に従って事務管理をしなければならない。
(民法・e-GOV法令検索)
なお、3か月以内に所有者が現れたとき、Aは所有権を取得できないが、物件の価格の5%以上20%以下の報労金を受け取ることができる (遺失28条)。
(報労金)
第二十八条 物件(誤って占有した他人の物を除く。)の返還を受ける遺失者は、当該物件の価格(第九条第一項若しくは第二項又は第二十条第一項若しくは第二項の規定により売却された物件にあっては、当該売却による代金の額)の百分の五以上百分の二十以下に相当する額の報労金を拾得者に支払わなければならない。
2 前項の遺失者は、当該物件の交付を受けた施設占有者があるときは、同項の規定にかかわらず、拾得者及び当該施設占有者に対し、それぞれ同項に規定する額の二分の一の額の報労金を支払わなければならない。
3 国、地方公共団体、独立行政法人(独立行政法人通則法(平成十一年法律第百三号)第二条第一項に規定する独立行政法人をいう。)、地方独立行政法人(地方独立行政法人法(平成十五年法律第百十八号)第二条第一項に規定する地方独立行政法人をいう。)その他の公法人は、前二項の報労金を請求することができない。
(遺失物法・e-GOV法令検索)
(参考)物権法[第3版] NBS (日評ベーシック・シリーズ) 日本評論社


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