民法を学ぼう!「 占有権(15)本権にかかわる効力(2)」

スポンサーリンク
司法・法務

取得時効の要件としての占有(1)

取得時効の要件

占有には、他の要件と結びついて、所有権などの本権の取得をもたらす効力がある。 ここでは、 取得時効について検討を行う。

A所有の甲土地をBが長年占有していたとき、Bはどのような要件を満たせば甲を時効取得できるか。 取得時効の要件は、①20年間、②所有の意思をもって、③平穏に、かつ、④公然と、⑤他人の物を、占有することである(162条1項)。さらに、占有者が、⑥占有の始めに善意無過失である場合には、占有期間が10年であっても取得時効が完成する(同条2項)。

(所有権の取得時効)
第162条 二十年間、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した者は、その所有権を取得する。
2 十年間、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した者は、その占有の開始の時に、善意であり、かつ、過失がなかったときは、その所有権を取得する。
(民法・e-GOV法令検索)

取得時効の完成を主張したいBは、①~⑥について、どのようなことを主張・立証しなければならないのか。占有者は、所有の意思をもって、善意で、平穏に、かつ、公然と、占有をするものと推定される (186条1項)。 したがって、占有者であれば、取得時効の要件である②~④を満たしていると推定される。

(占有の態様等に関する推定)
第168条 占有者は、所有の意思をもって、善意で、平穏に、かつ、公然と占有をするものと推定する。
2 前後の両時点において占有をした証拠があるときは、占有は、その間継続したものと推定する。
(民法・e-GOV法令検索)

⑤は自己の物でもよいとされている。したがって、Bはこれらを立証する必要はない。

また、①⑥の占有期間については、占有開始時と時効期間の満了時の占有をした証拠があれば、その間占有が継続していたものと推定される (同条2項)。

なお、⑥のうち善意であることは推定されるが、無過失については推定されない(大判大正8・10・13民録25輯1863頁)。

結局、Bは甲土地を20年以上占有しているのであれば、占有の事実のみを主張・立証すればよい。Bの占有期間が10年以上であるが20年に満たない場合には、占有の事実と、占有の始めに自己に所有権があると信じたことにつき過失がないこと(無過失)を主張・立証すればよい。

自主占有

上述②の所有の意思に基づき行う占有を、自主占有という。所有の意思に基づく占有であるかどうかは、外形的、客観的にみて判断される。無主物先占が認められるためにも、この自主占有が必要とされる。

他人の占有(代理占有)を通じて、自主占有することもある。A所有の甲土地を無断でBが自分の物として占有している場合、Bが甲をCに賃貸しても、Bの自主占有となる。

自主占有と対になるのが他主占有である。所有の意思なく他人の物として占有することである。A所有の甲土地を賃借しているBは、甲を他主占有していることになる。他主占有者に時効取得が認められることはない。

他主占有が自主占有に変わることがある。たとえば、Aの所有物を賃借していたBが、Aに対して 「これは私の物だ」というように、所有の意思を表示した場合、他主占有が自主占有に変更される (185条)。

相続による他主占有から自主占有への転換

相続によって占有は承継される。それでは、相続がなされると、相続人は常に占有を承継することになるのか。すなわち、相続人は被相続人の他主占有を引き継ぐのか、それとも新たに自主占有を開始し、取得時効が認められるのか。

判例は、相続人が相続により所有の意思をもって占有しているときに、自主占有が開始することを認める(最判昭和46・11・30民集25巻8号1437頁)。その根拠として、相続が他主占有から自主占有への変更原因である 「新たな権原」(185条)に当たることが考えられる。

(占有の性質の変更)
第185条 権原の性質上占有者に所有の意思がないものとされる場合には、その占有者が、自己に占有をさせた者に対して所有の意思があることを表示し、又は新たな権原により更に所有の意思をもって占有を始めるのでなければ、占有の性質は、変わらない。
(民法・e-GOV法令検索)

なお、このとき、 相続人は自ら所有の意思があることを証明しなければならない (最判平成8・11 ・12民集50巻10号2591頁)。 民法上、占有者には所有の意思があることが推定される(186条1項)。 しかし、被相続人が他主占有していたにもかかわらず、相続人が自主占有を主張する場合には、性質変更という事情がある。そのため、この規定は適用されない。

(占有の態様等に関する推定)
第186条 占有者は、所有の意思をもって、善意で、平穏に、かつ、公然と占有をするものと推定する。
2 前後の両時点において占有をした証拠があるときは、占有は、その間継続したものと推定する。
(民法・e-GOV法令検索)
占有者の選択権 

Aの占有をBが承継した場合、Bは自己の占有のみを主張することも、自己の占有に前の占有者Aの占有を併せて主張することもできる (187条1項)。

自己の占有と前の占有者の占有とを併せるかどうかについては、占有者に選択権が認められる。なお、前々主の占有を併せることも可能である。

(占有の承継)
第187条 占有者の承継人は、その選択に従い、自己の占有のみを主張し、又は自己の占有に前の占有者の占有を併せて主張することができる。
2 前の占有者の占有を併せて主張する場合には、その瑕疵をも承継する。
(民法・e-GOV法令検索)
占有合併による有利・不利

Bが取得時効の成立を主張するとき、Aの占有を併せることにより、時効期間が満たされやすくなるというメリットがある。Aがある土地を12年間占有している場合、Aの承継人Bは8年間の占有で、取得時効の完成を主張できる(162条1項)。

しかし、Aの占有を併せることが、Bに常に有利になるとは限らない。なぜなら、BはAの瑕疵を承継するからである(187条2項)。

Aが甲土地を8年間悪意で占有し、Bが10年間善意無過失で占有している。Bは自己の占有にAの占有を併せて主張する場合、18年間の悪意占有となる。
この場合、取得時効は成立しない。他方、Bは、自己が善意無過失で10年間占有したことを主張すれば、取得時効の成立が認められる(162条2項)。

悪意占有者の善意占有承継

ある土地をAが善意無過失で7年間占有し、Bが悪意で8年間占有をした場合、取得時効が成立するか。

判例は、Aの善意無過失に基づき、 Bは10年間の取得時効の完成を主張できるとする(最判昭和53・3・6民集32巻2号135頁)。 その理由は2点挙げられている。第1に、民法162条2項は、善意の判断基準時を明確に 「占有の開始の時」としているからである。第2に、善意占有者が後に悪意占有者となっても時効完成は認められるところ、占有主体が変更した場合に区別すべき理由がないからである。

参考)物権法[第3版] NBS (日評ベーシック・シリーズ) 日本評論社

コメント

タイトルとURLをコピーしました