民法を学ぼう(心裡留保)

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司法・法務

今回は、意思表示に関する民法の規定についてみてみよう。

意思の不存在と瑕疵ある意思表示

先ずは、意思表示に関する規定の全体構造を確認しておこう。

意思表示に関する規定は、(1)表示に対応する内心的効果意思が存在しない場合と(2)存在する場合に分かれる。(1)はさらに(1-1)表意者が内心的効果意思が存在しないことを知っている場合と(1-2)存在しないことを知らない場合に分かれる。

ここで、「内心的効果意思」とは何かということを確認しておこう。

内心的効果意思とは

民法では、意思表示は、「動機→内心的効果意思→表示意思→表示行為」で成り立つとされている。

・「今日は暑いので冷たいものが食べたい」・・・動機
・「コンビニで150円のアイスクリームを買おう」(売買契約の締結を決意)・・・内心的効果意思
・コンビニのレジに150円のアイスクリームを持って行って、「これを買います。」と言おう・・・表示意思
・「この150円のアイスクリームをください。」・・・表示行為

内心的効果意思とは、その意思表示によって最終的に認められる法律効果に対応する意思のことである。上記の例では、売買契約の法律効果は、財産権移転義務と代金支払い義務の発生である(555条)から「コンビニで150円のアイスクリームを買おう」というのが、内心的効果意思である。

さて、民法では、(1)表示に対応する内心的効果意思が存在しない場合を「意思の不存在」または「意思の欠缺(けんけつ)呼ぶ。

そして、(2)表示に対応する内心的効果意思が存在する場合において、その内心的効果意思が動機において、重大な勘違いや詐欺・強迫によって作出されたとき、表意者を保護するためその意思表示を取り消すことができる権利を与えた。これらの場合を「瑕疵ある意思表示」と呼ぶ。

本稿では、このうち、(1-1)表意者が内心的効果意思が存在しないことを知っている場合の「心裡留保(しんりりゅうほ)」を取り上げる。

心裡留保

条文を確認しておこう。

(心留保)

第九十三条 意思表示は、表意者がその真意ではないことを知ってしたときであっても、そのためにその効力を妨げられない。ただし、相手方がその意思表示が表意者の真意ではないことを知り、又は知ることができたときは、その意思表示は、無効とする。

 前項ただし書の規定による意思表示の無効は、善意の第三者に対抗することができない。

民法・e-Gov法令検索

「心裡留保」とは、端的に言えば、「ウソ」あるいは、相手にも当然わかると思って冗談を言うことである。例えば、Aが売るつもりもないのにBに「このノートパソコンを10万円で売ってやろう」と言ってBが承諾した場合である。このAの申し込みを「心裡留保」という。

民法は、内心的効果意思の存在しない心裡留保による意思表示であっても原則有効とした。自分からウソを言っているAを保護する必要はないのである。(93条1項)

ところが、これが無効になる場合がある。上記の例で、ノートパソコンを売るなんて冗談だとBにはわかっていた。この場合は無効となる。(93条1項ただし書き)

次の場合は、どうだろうか。上記の例で、Aが売るつもりがないことは誰にも分るものであった。しかし、軽率にもBがこの申し込みを信じて承諾して、さらにCに11万円で転売する契約を締結したのである。ここで、93条2項の登場である。「前項ただし書の規定による意思表示の無効は、善意の第三者に対抗することができない」としたのである。

ここで、善意とは「Aの意思表示が心裡留保であることを知らない」ことを言う。そして、「対応する」とは、「主張する」ことである。

この例では、Cが、「Aの意思表示が心裡留保であることを知らない」場合は、Aは自己の意思表示が無効であることをCに主張できず、Cはノートパソコンを手に入れることができる。なお、善意や第三者については、「通謀虚偽表示」で改めて取り上げることにする。

参考文献)民法総則「第2版」 原田 昌和 他著 (日本評論社)、司法書士 合格ゾーンテキスト 1 民法I  「第3版」根本正次著 (東京リーガルマインド)

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